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ストーリーを大切にした本づくり。
TWO VIRGINSインタヴュー

「街の価値を更新する」をテーマのひとつに、神田錦町から情報を発信するウェブマガジンensemble。九段下にオフィスを構えるTWO VIRGINSは、人と人との出会いの中で、時代に左右されない普遍的な価値をもつ本をリリースし続ける出版社です。とどまることなく新陳代謝していく都市の「実験」を探ることをテーマに昨年創刊した雑誌「MEZZANINE」も大きな反響を呼びました。ensembleでは、TWO VIRGINSで出版企画を手がける後藤佑介さんと齋藤徳人さんに、TWO VIRGINSをスタートした経緯、この街で働くことについてなどお話を伺いました。

ー TWO VIRGINSとして、これまで何冊の本を出版されていますか?

後藤:最新刊を含め、これまで12冊の本を出版しています。ペースとしては月1で出せるように頑張っています。

ー それは通常の出版社では多いほうなのでしょうか?

後藤:規模にもよると思いますが、刊行点数は少ないと思います。

ー 何名で運営されていますか?

後藤:現在4〜5名のチームで動いています。親会社は25年前に川崎で創業しました。業務内容は出版社さんの出版支援をしており、現在は九段下に本社があります。TWO VIRGINSは2015年にスタートしました。

ー TWO VIRGINSという社名の由来と始めたきっかけを教えてください。

後藤:社名については弊社代表がもともとジョン・レノンが好きで、ジョン&ヨーコの有名なアルバムのタイトルから拝借しました。創業のきっかけは出版支援の仕事をするなかで、いつかは自分たちで発信をしたいと思っていたことでした。これまでは著者の方との出合いのなかで本を出版してきました

ーー出版されている本のジャンルは多岐にわたっていますが、それぞれの分野のプロフェッショナルの方と本をつくられているところは素敵だなと思いました。本作りで大切にしていることを教えてください

斎藤:開かれた出版社にしていきたいと思っています。人とのつながりのなかでみなさんと一緒に本をつくっていきたいという思いがあります。もちろん大ヒットは狙いたいのですが、読者の方にしっかり伝わる、TWO VIRGINSの本なら呼んでみたいと思ってもらえる本をつくりたいと思っています。

ー ウェブサイトを拝見して、「消費されないなにか」というメッセージに共感しました。この言葉にこめた思いを教えてください。

後藤:出版に携わっている方はみなさんそうだと思うのですが、先行きのみえにくいなかで日々編集に携わり本を出版しています。いまの出版システムが少しずつ変わりつつあるような気もしていますが、自社の出版システムをしっかりと持続可能なものにしていきたいという思いが私たちにはあります。

ー 本は本屋さんだけではなく、雑貨屋さんやアパレルのお店などに置かれることも多くなりました。本には限りませんが、メッセージをもってつくることで、伝わる窓口も増えるような気がします。

斎藤:そうですね。いまより気軽に本に触れ合ってもらえたら嬉しいですね。売り方もハイエースを借りてみんなでイベントに売りにいったり、アートブックフェアに出店したり、より多くの方に本との接点をもっていただけるような努力をしています。つくって終わり、店頭に並んで終わりではなく、さまざまなかたちでお客様に届ける努力ができるのも、小さな出版社ならではなのかなと思っています。

ー 素晴らしい取り組みですね。お客様と本との接点に関して印象に残っていることはありますか?

斎藤:以前キャンプ場で行われたマーケットに出店したことがありました。その時に本を買ってくださったお客様が、湖のほとりの暗がりのなかで、ご夫婦なのか二人で肩を寄せ合ってランプの灯りのもと本を読んでいるシーンに遭遇したことがありました。そのときは、私たちがつくっている本がその方のライフスタイルの中に入り込めた気がしてとても嬉しかったです。

ー 昨年出版された都市に着目した雑誌「MEZZANINE」は、さまざまなジャンルの方に注目され話題になりました

斎藤:私自身、これまでどちらかといえばローカルなコミュニティに興味があった人間なのですが、吹田さんに出会って都市って面白いと思うようになりました。街がどうつくられているのか、私自身東京という都市のなかで暮らしながら、普段何気なく見ているものも、よくよくみてみると新しい発見があることに気づきます。そのような気付きを自分たちがつくる本のなかでも大切にしたいという思いがあります。

ー 出版不況といわれる時代に、本をつくる原動力になっているのはどのようなことですか?

後藤:TWO VIRGINSの本を一緒につくる著者の方の思いを、本というかたちで読者の方に届けたいという思いが私たちが本をつくる原動力のひとつになっていることは間違いがありません。そこにあるストーリーを読者の方にもっとお届けしたいと思っています。

ー MEZZANINEはTWO VIRGINSさんが出版する本のラインナップの中では初のシリーズもので、ある種雑誌にも近い本ですね。

後藤:MEZZANINEに関しては吹田さんの出版や本、都市に対する思いが遺憾なく発揮された本です。つくり方も開かれた編集部にしようということで、ライターやフォトグラファーの方にも自主的にご参加していただき本づくりをしています。一見専門性の高い本にみえますが、実は雑誌感覚でどなたにも読んでいただける本で、おかげさまで多くの反響をいただいています。

ー 今後どんな本をつくっていきたいです?最新情報と合わせて教えてください。

後藤:遊び心があって、インディペンデントな心をどこかに残した本をつくりたいと思っています。それとこだわりをもちながら、変化をしていきたいと思っています。
最近はソーヤ海さんが著者の「みんなのちきゅうカタログ」という本をクラウドファンディングをつかってつくりました。持続可能な社会をつくろうということをテーマにした、こどもたちに向けた本です。パーマカルチャーに関する本なのですが、新しいのは「東京アーバンパーマカルチャー」と主宰する海さんが都市部でそれをやろうとしている点です。人と人との関係もデザインだというスタンスでさまざまな活動を展開している方たちです。

ー 時代の空気を読み取りながら、人びととの関係の中で本をつくられています。今日お二人のお話をうかがって、本つくりは街づくりに似ているとおもったのですが、九段下を含め、神田エリアのよいところはどのような点だと思われますか?

後藤:まず私たち出版に携わる人間にとっては、昔から多くの出版社が集まる、出版の聖地という点です。街を歩いていると出版界の大先輩にお会いできたり、多くの方と出会うことができます。本の街として古書も新刊書も分け隔てなく共存しているところも他の街にはないユニークなところだと思います。
それと飲食にしても大手のチェーン店が少なくて個性的なお店がたくさんあり、伝統が残っているところも魅力です。40年、50年と営業しているお店が普通にあって、大先輩たちが通っていたお店が元気に営業しています。それぞれ個性をもったお店がいまも残っているところはすごいところですね。これまで地元という意識はあまりなかったのですが、近い考えをもった方々と出会わせていただく機会も増えてきました。本というツールでこの街とここに集う方たちに貢献できればと思っています。

TWO VIRGINS
2015年にスタートした出版社。消費中心の社会において「消費されないなにか」をテーマに、良質な本をリリースし続けている。主な出版物に「ある犬のおはなし」「NEIGHBORHOOD TAIPEI」「MEZZANINE」ほか。最新刊は「みんなのちきゅうカタログ」

写真と文=加藤孝司

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