料理研究家・植松良枝さんと歩く神田(後編)
2019.2.28

ある日、料理家の植松良枝さんとの雑談中、神田の街の話になった。老舗と新しい個人商店が共存している街だと言ったら、「面白そう! じっくり散歩してみたい」と言う。植松さんは、インド、ベトナム、台湾など、世界各国を旅行するのが趣味でもあり、特にスペインのバスクには毎年通って、バスク料理のレシピブックやガイドブックを出版しているという町歩きの達人。そんな植松さんが見つけた神田の魅力とは?
前編、後編と2回に渡って、植松良枝さんとのぶらり神田散歩のレポートをお届けします。

神田でお買い物を楽しむ

「まつや」のカレー南蛮でからだが暖まったところで、しばらく街をぶらり。
建築専門の古書店「南洋堂」では、以前訪れたスリランカで好きになったという「バワ」の作品集や、ハノイの建築の写真集などを見つけてうれしそう。

ensemble - urban vineyard kanda nishikicho 2018

古書街近くにある、「五割一分」へも立ち寄った。
「以前、こちらの三浦さんと一緒に、神田テラススクエアでのワインイベントで料理を出したことがあるんです」

神田の街は、ワインショップや、おいしいワインを提供するレストランも多く、テラススクエアの屋上では富山のワイナリー「セイズファーム」と協力して、ワイン用の葡萄の苗を育てている。

「順調に育っていると聞いて安心。五割一分にも初めて来られて嬉しい」

ensemble - urban vineyard kanda nishikicho 2018

五割一分は、建築・設計やグラフィックデザインを手がけているデザイン事務所。インテリアショップやギャラリーとしても営業していて、家具やインテリア小物、器、書籍など暮らしを豊かにするアイテムを販売している。

「洗練された空間も素敵だし、家具だけでなく、欲しい器がたくさんあります」

五割一分
東京都千代田区神田神保町1-37 武田ビル1F
http://www.5wari1bu.jp/
ensemble - urban vineyard kanda nishikicho 2018

水道橋方面へ向かう道すがら、発見したのがコーヒー豆の焙煎ショップ「倉木コーヒー商店」。
歴史を感じさせる店構えに惹かれて入ってみると、浅煎りにこだわった豆を喫茶店などに卸しているとのこと。小売りもしてくれると聞いて、「キリマンジャロ」を購入。

「業務用というだけあって、価格が手頃なのがうれしい。こういうスタンダードな味わいって、気兼ねなく飲めて、日々の暮らしになじむんですよね」

倉木コーヒー商店
東京都千代田区神田神保町2-28
http://www5b.biglobe.ne.jp/~kuraki/
ensemble - urban vineyard kanda nishikicho 2018

次に訪れたのは、水道橋駅近くの古いビルの一室でオープンしている器の店「千鳥」。
広々とした空間に、アンティーク風の什器と器がずらりと並び、物欲が刺激されること間違いなし。

「信頼する友人が通っている器ショップで、以前、一緒に連れてきてもらって好きになりました。とても使いやすく、料理が映える器がたくさんあります。柳田さんとお話していたら、知人で華道家の上野雄次さんが、店内の花生けをよく手がけられていると聞いて親近感がわきました」

ensemble - urban vineyard kanda nishikicho 2018

「今日は、以前購入したシンプルな白いお皿が使いやすかったので、買い足したくて」
オーナーの柳田栄萬さんに聞いてみたところ、植松さんが購入した白い器は、スタッフの間でも高い人気を誇る石田誠さんという作家の作だそう。

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千鳥
東京都千代田区三崎町3-10-5 原島第二ビル201A
https://www.chidori.info/
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たくさん歩いたあとは喫茶休憩

お菓子、寿司、コーヒー豆、器と荷物をたくさんぶら下げて、ちょっとひと息つきたくなった植松さん。喫茶店を探しながら、神楽坂まで足を延ばすことに。

「神保町から神楽坂って歩けちゃうんですよね。いろいろなお店があって飽きないし、こんなにたくさん歩いたのは久しぶりだなぁ」

ensemble - urban vineyard kanda nishikicho 2018

神楽坂を登り、辿りついたのが「トンボロ」。山小屋のような建物は、古き良き喫茶店という風情。常連さんが並ぶカウンターに座って、ふわふわのパンケーキとコーヒーをいただく。

「散歩のあとは、やっぱり甘いもの。こちらのパンケーキ、シンプルな味わいでおいしい。店内の雰囲気も落ち着きます」

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トンボロ
東京都新宿区神楽坂6-16

町歩きの達人にも、神田散歩は楽しんでいただけたよう。
翌日、植松さんのご自宅での朝ごはんの様子を見せていただいた。

ensemble - urban vineyard kanda nishikicho 2018

「千鳥」で購入した宮下敬史さん作の木皿に、「神田志の多寿司」で購入した茶巾寿司を盛り付けて。「この木皿は、和洋中どんな料理にも合いそうだし、使いこむほどにアンティークのように味わいが出てきそう」と植松さん。
「茶巾寿司は、黒ごまや海苔、細かく刻んだかんぴょうやしいたけ、えびや刻み穴子などが混ぜこまれた、しっかり味の五目ずしを、ふっくらと薄焼き卵で厚めに包んだ、どこにもないここだけの味。
稲荷寿司は、しっかりと甘味が強く、ジューシーなのが特徴。常温でも日持ちしそうだから、手土産や差し入れにぴったりですね。熱々のお茶と一緒にいただけば、疲れが吹き飛びます。アウトドアやスポーツ観戦にもよさそう。
少しお値段は張りますが、冬の季節稲荷、柚子稲荷寿司があるのもうれしい。お揚げを裏返した中に、柚子の皮を甘く煮たものが、甘めの酢飯にたっぷりと混ぜ込まれていて、頬張ると柚子の香りが口いっぱいに広がります」

ポルトガルのお菓子に寿司、七味、コーヒー豆と、手土産もたくさん見つかる神田の街。
晴れた日はぜひ、散歩を楽しんで。

写真と文=藤井志織

植松良枝
植松良枝(うえまつ・よしえ)
料理研究家。料理教室を主宰するほか、雑誌、書籍、テレビ、webなどで活躍中。また、代々木八幡にあるベトナム料理店「ヨヨナム」のプロデュースを始め、企業やレストランのメニュー開発も行っている。インスタグラムは @uematsuyoshie
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