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Kanocoさん清永さん
神田錦町お散歩対談(後編)

Kanocoさん、清永さんインタビュー

テラススクエアで開催中の写真展「Plenum」の写真家である清永洋さんと、写真好きとしても知られる人気モデルのKanocoさんの対談後編は、さらに深くお二人の写真談義をおおくりします。写真を撮り始めたきっかけや、使っているカメラについて、普段雑誌の撮影で、「撮る、撮られる」な関係のお二人ならではの、ざっくばらんなフリートークをお楽しみください。

フィルム写真ならではのたのしみ

ー Kanocoさんは2016年よりOZmagazineのカバーガールをつとめると同時に、誌面の中では写真とエッセイの連載「Kanocoのハローアゲイン」もされていますよね。

清永:フォトエッセイの連載開始は表紙と同時ですか?

Kanoco:はい。1ページの連載ですが、写真と文章の両方をやらせていただいています。

清永:いつも締めの言葉が素敵ですよね。

Kanoco:誰も気づいていないかもしれませんが、「今日も佳い日になりそうだ」というのと「なんだか佳い日になりそうだ」という2パターンあるんです。

清永:ほんとだ!写真と文章の雰囲気がぴったり合っていてすごくいいですね。Kanocoちゃんはいつから写真を撮りはじめたんですか?

Kanoco:いつを始まりといっていいやら。みなさん、いつを始まりと言っているんですかね?

Kanocoさん、清永さんインタビュー

清永:でも、いまの若い人たちはとくに、携帯で撮り始めたりするから、いつというのはなかなか難しいですよね。Kanocoちゃんは写ルンですも使ってますよね。

Kanoco:はい。その前にはデジタルカメラでも撮っていました。そういった意味では写ルンですを使いはじめたのはモデルをはじめた6年ほど前からです。 神戸から上京してきて、まだ渋谷区円山町に住んでいたころです。写ルンですで、毎日風景ばかりを撮っていました。そのときに撮った1枚の写真が、写真を意識するきっかけで、今日持ってきました。 近所のさるすべりの木を撮ったもので、写真に不思議な光が入り込んでいる感じがすごく好きです。自分でもこんな写真が撮れるんだと思いました。

清永:フィルムで撮り、現像に出して、紙に焼き上がって手元に届くというプロセスには、デジカメで撮って液晶画面で確認するのとは全然違う喜びがあると思う。 撮ってからタイムラグもあるし、失敗というものが起こるのもフィルムだし。偶然手に入れたものは貴重で、自分にとっては特別なものになりますよね。

Kanoco:プリントにあらわれた「点々」が好きなんです。

清永:あくまでプリントのミスなんだけど、これは確かにアナログならではの出来事だよね。

Kanoco:そこからいつもそのさるすべりの木は撮っちゃいますね。

Kanocoさん、清永さんインタビュー

ー いま、フィルムでというお話がありましたが、デジカメでは写真を撮らないんですか?

Kanoco:デジタルは使わないです。ボタンが多すぎてどうやっていいか分からなくて。いつも使っている「現場監督」というカメラならシャッターを押すだけという気軽さが気に入っています。

清永:これを選ぶというあたりがすごいよね。どうやって手に入れたんだっけ?

Kanoco:コニカの現場監督はお仕事で中古カメラ店巡りをしたときに買いました。友達が同じカメラを持っていてかわいくて欲しいなあと思っていて。そのカメラ屋さんにはこのカメラがたくさんあって、一目見て惚れちゃって買いました。 カメラには現場監督というロゴが書いてあるんですよ。いろんなカメラを使っていて、壊れては買ってを繰り返しています。

清永:どこが気に入っているの?

Kanoco:このカメラのお気に入りポイントは、このカメラを買ったときのおまけにつけてくれたストラップです。パーツの部分にフィルム巻き上げボタンを押す突起が付いていて、ものすごく便利なんです。

清永:セレクトがユニークだなあ。

Kanocoさん、清永さんインタビュー Kanocoさんが愛用するカメラ、「Konica 現場監督」と「agfa OPTIMA 535 」。

Kanoco:今日はもう一台、3年前に手に入れた「agfaのOPTIMA 535」というカメラをもってきました。これは見た目が可愛くて買ったのですが、使い方が難しくてほとんど使っていません。

清永:カメラはいま何台くらいもっているの?

Kanoco:6台くらいです。フィルムは感度1600のナチュラを使っています。

清永:感度が高いぶん、粒子が少し荒れるからそれもいい雰囲気に写りますよね。

ー 次に欲しいカメラはありますか?

Kanoco:とくにはないです。カメラに詳しくないので…。撮れればいいです。

清永:Kanocoちゃんにとって大事なのは?操作してどうのではなく、押したら撮れること?

Kanoco:はい。カメラが好きというわけではなく、写真が好きなので、撮れればいいです。

清永:それは分かります。

Kanocoさん、清永さんインタビュー 清永さんの愛機「PENTAX 67」

ー 清永さんはどうですか?

清永:僕も機材にはそれほどこだわりがなくて、最新の機材の情報も分かりません。自分の手になじむもの、持ってしっくりくるものが一台あれば十分です。

Kanoco:私はすぐ撮りたいのでピントも合わせたくないんです(笑)

清永:Kanocoちゃんはどんな写真を撮りたいと思っていますか?

Kanoco:光を撮りたいです。光って写真に映りますからね。フレア、ハレーション、写真を撮っていて、光が撮れる!ということに感動して、そればっかり撮っています。あと、影と光の陰影が撮れると嬉しくて。

清永:たしかにフィルムで撮るとコントラストが強めにでるというのはあると思います。光が好きな感覚はわかります。ピントなんかどうでもいいんだなとか。それでいいんですよ。写真に正解はありませんから。

Kanoco:それと私シャッターをあまり押しません。36枚撮りフィルムで1ヶ月に1本くらい、一日一枚くらいのペースです。 iPhoneで撮るのはメモ代わりとして使うくらいですね。シャッターを押すのは、ビルに太陽が反射している瞬間だったり、基本光ばかりを撮っています。

清永:では、晴れの日に?

Kanoco:はい。撮るときも撮らないときも、いつもこのカメラを首からぶら下げています。一日一枚も撮らないときもあって、ああ、今日も重いだけだったなあとか(笑)。

清永:こんなおしゃれな服を着て、首から現場監督を下げているのがいいですね。

Kanoco:あと東京タワーをいつも撮っています。ロケで首都高を走っているときに、ロケバスの窓を開けて、撮っています。東京への憧れですかね。

Kanocoさん、清永さんインタビュー 清永さんが表紙を撮った「OZmagazine」とKanocoさんの連載ページ。

「撮る、撮られる」の関係性

清永:出身はどこでしたっけ?

Kanoco:兵庫の田舎出身です。20歳のときに全部捨てる覚悟で上京しました。ひとつのことを突き詰めるタイプで、モデルになると決めたときも東京だと思って。 ノートに東京に行った時のメリットデメリット、行かなかった時のメリットデメリットを書き出したのですが、明らかに行かなかった時のメリットのほうが多かったんです。でも、モデルをやりたい!という一心で、それこそ決死の覚悟でした。

清永:でも、人生ってその一個を選べるかどうかですよね。リスクを含めても惹かれるというか、それだけ強く思えるかどうかという。

Kanoco:でも、モデルになれるんですね(しみじみと)。東京には夢がありますよ。原宿を歩けばモデルになれます。

清永:えっ?原宿を歩いたの?

Kanocoさん、清永さんインタビュー

Kanoco:原宿一日勝負!と思って、表参道を5時間くらい行ったり来たりしました。それで今の事務所の方と出会いました。

清永:それはすごいなあ。

Kanoco:お金がなかったので、一日しかいられなかったので必死でした。それで事務所に所属することになり、「渋谷」「不動産」でインターネットで検索して、円山町にアパートを借りました。

清永:夢を掴む話になりましたね。だから渋谷だったんですね。それはさるすべりの木を撮りますね(笑)。

Kanoco:清永さんは写真家としてどうありたいですか?

清永:僕は写真家としてこうありたいという形は特に持ってないんだけど、ただ、被写体や自分自身や見てくれる人に対して、写真というものに対して、いつも誠実でいたいと思っています。そうやってずっと撮り続けていけたらと。

Kanocoさん、清永さんインタビュー

ー モデルとして、「撮る、撮られる」の関係性はどうですか?

Kanoco:写真も仕事として撮らせていただいていますが、撮るのは好きだからというのが大きいです。モデルのお仕事はさらに責任感をもっていますし、ちゃんとしています。

清永:でも発信するという意味では両方表現ですよね。

Kanoco:でも緊張しますよ。上京して7年間、いつも緊張しっぱなしです。

Kanocoさん、清永さんインタビュー Photo by Kanoco

清永:大変な仕事ですよね。OZの時も緊張してる?

Kanoco:毎回緊張して、汗びっしょりです。どの仕事もずっと緊張しています。

清永:それを感じさせないのはさすがですね。緊張は僕も同じです。

Kanoco:先日の撮影のときに、清永さんの背中に汗で羽根が生えていましたものね。

清永:Kanocoちゃんでもやっぱり緊張するものなんですね。なるほど、当たり前ですがふわっと出来る仕事ではないですよね。

Kanocoさん、清永さんインタビュー

Kanoco:最近やっと全体をみながらお仕事ができるようになってきたように思います。

清永:モデルとしてはどうありたいですか?

Kanoco:人生の目標が最高の普通でいたい、ということです。それと一生モデルをやっていたいです。 モデルさんの中にはものすごくスタイルがよくて可愛い人がたくさんいますが、私はとびきり可愛いわけでも、スタイルがいいわけでもありません。 その人たちにくらべたら私は普通ですし、普通の中で最高になれたらいいなあといつも思っています。「1」くらい憧れをもってもらえたら嬉しいなあと思います。

清永:いい話ですね。

Kanoco:それとこれからは地元に貢献するのもひとつの目標です。前にとても嬉しいことがありました。 地元の文化祭で中学生のコが、地元出身の有名人ということで私を選んでくれて、アンケートに答えてくださいと依頼されました。 最後の質問に「小さな田舎で大きな夢をもつことができません」と書いてありました。でも、どんなに小さな町でも大きな夢をもてるんだよということをすごく伝えたくて。 その子達に夢を与えられるなら、ずっとモデルをしていたいと思いました。大人になると世界はすごく広いんだよ、自由になれるんだよということを伝えたいです。

清永:そう思う。大人になると選択肢が広くなるんだということはすごく教えてあげたいよね。

Kanocoさん、清永さんインタビュー

ー 好きな写真家はいますか?

Kanoco:出身が近いということもあって植田正治さんが好きです。植田さんは鳥取砂丘で作品を撮っていましたが、私が生まれ育った場所からも近くて、庭みたいな場所でした。 でも植田さんの作品に写っていたのは、私が全然みたことのない砂丘で、感激してしまいました。

清永:僕も大好きな写真家です。砂丘を舞台に演出のされた写真は見ていてとても楽しいですね。昔、植田正治さんが住んでおられた家の中をご子息の方に見せていただいたことがありました。 フィルムやアルバムなどお宝が山のようにあってそれはもうすごい場所でした。

Kanoco:ドキドキしてきました。一度お会いしてみたかったです。

清永:最近思うのは量なくして質はない、ということです。

Kanoco:継続は力なりですね。

ー 神田錦町あたりには来ることはありますか?

Kanoco:はい。一人で「さぼうる」にナポリタンを食べに来たこともあります。前に来たときには、フィルム1本撮ろうと思って、古本屋さんに行ったり、1日ウロウロしました。 来たからにはその場所を知りたいといつも思っています。旅の取材のときにも自腹で前泊してお散歩するのが好きですよ。

清永:たしかに、神田神保町界隈といえば、古書、そして古い喫茶店というイメージですよね。 僕もこの写真展で関わるようになって初めて、こんなに開発されて新しい場所があるんだと知りました。街が持つポテンシャルというか、その振り幅はすごいと思いました。 この辺りは都会的なところと懐かしいところが混ざっていて、とてもいいところですよね。では、さぼうるにナポリタンでも食べに行きましょうか!

Kanocoさん、清永さんインタビュー Photo by Kanoco
Kanoco
Kanoco(BARK in STYLe)(かのこ)
モデル。兵庫県生まれ。雑誌や、広告、TVCMなどで活躍する。2016年より、OZmagazineのカバーガールをつとめる。 雑誌「OZmagazine」、「SPRiNG」に写真とエッセイを連載中。著者に「カノコノコト」(宝島社)。趣味は写真と料理、大のシロクマ好きとしても知られる。BARK in STYLe所属。
清永洋
清永洋(きよなが・ひろし)
写真家。福岡県生まれ。九州芸術工科大学卒業後、会社員を経て独学で写真を学び2003年写真家として独立。 雑誌や書籍、Webや広告の分野などで活動中。テレビ番組「のんびりし〜な」(CNA秋田ケーブルテレビ)にも出演している。 現在、写真展「テラススクエアフォトエキシビションvol.7 清永洋 Plenum」が開催中。

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Vol.13
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