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「すべては終わりからはじまっている」
(前編)

大森克己さん+石田真澄さん対談

現在テラススクエアで開催中の「テラススクエアフォトエキシビション vol.8 石田真澄 A Day in the Life」。石田さんは高校時代に撮影した写真で在学中から注目を集め、高校を卒業した現在、個展の開催や雑誌などを舞台に活躍する若手写真家。その石田さんと写真家の大森克己さんがインスタグラムでつながっていると知り、親子ほど歳の離れた二人の写真観について聞いてみたいと思った。誰でもが簡単に写真を撮りつつそれを活用している時代はこれまでにあっただろうか?なぜ今この時代に写真を撮るのか、二人の写真家の言葉をお聞きください。

あるコミュニティの中で撮られた美しい写真

ー 大森さんと石田さんは以前から繋がりがあるとお聞きしました。そのきっかけから教えてください。

大森:そもそもなぜ娘ほど歳の離れた石田さんのことを知ったかというと、インスタで石田さんにメッセージをいただいたんですよ。

石田:そうです。

大森:編集者の岡本仁さんとSPBSでインスタグラムの写真を巡るトーク、「誰でも撮れて、誰でも発信できる時代の写真"論"」の4回目のゲストに出たときの内容がZINEになったときでしたね。それが2016年の11月くらいでした。

石田:はい。その本が出た時に、大森さんのインスタグラムにメッセージをさせていただきました。

大森:それ以前に俺が石田さんのことを知っていたかどうかというのは記憶が曖昧なんだけれども。

ー 石田さんはなぜ大森さんにメッセージをしたんですか?

石田:衝動です(笑)。その年の7月に行われた対談を聴きに行きたかったのですが、どうしても行けなくて、それでメッセージをしました。

大森克己さん+石田真澄さん対談

ー 実際にお二人がお会いしたのはいつですか

石田:2017年5月に表参道のギャラリーロケットで私が初の個展をしたときに大森さんにお越しいただいて。でも、その時には私は気付かずお話が出来ませんでした。実際にお会いしたのは6月にギャラリースタジオ35分という場所で大森さんがグループ展に出展されている時でした。

大森:でも、俺は人の個展で作家に会うのは少し抵抗があって。それは自分の場合も一緒で、会場で自分の作品を説明をするのも嫌だし、会場に作家がいるのも写真だけをみたいから邪魔なんだよね(笑)。もちろん気持ちは分かるんだけど。それが去年のことだから時間が経つのは早いよね。

ー 大森さんは石田さんの作品をどうご覧になりましたか?

大森:写真がきれいだなと単純に思ったよ。石田さんの作品の光がきれいじゃないですか。初の作品集である「light years -光年-」はまだみてないけど。

石田:今日持ってきました。

大森:ありがとう。ティーンエージャーというか、女の人って決めちゃうのはよくないのかもしれないけど、世の中に対する反抗する感じというか、そういうのが直接出ていないのが面白いなと思った。大人の世界といったらあれだけど、石田さんの写真は既存のものに対する異議申し立てというものとは違った成り立ちのようにみえるよね。それがいいことか悪いことか分からないけど。あるコミュニティの中に属していて、その記録としてとにかく美しい写真。世の中に対して中指を立てる感じがないところが不思議というか。

ー そういう写真って例えればどのような写真ですか?

大森:長島有里枝さんやHIROMIXが10代に近い年齢で世の中に登場してきた時ってそうだったよね。あるいは、ぜんぜん違うけど澤田知子さん。彼女たちの場合は世の中に対する異議申し立てじゃないけど、世の中に対する居心地の悪さのようなものが作品を作る際の大きなベースになっているように思えるんだけど。石田さんにはそれらとは別物の、この世界に対する違和感ではなくて、歓びに近いものを感じて、幸せなんだろうなあとか。中でもこの学校の屋上でみんなで弁当食べている写真は好きでしたね。

石田真澄「light years -光年-」より 石田真澄「light years -光年-」より

石田:これは高校生活最後のお昼休みの時に撮った写真です。

ー キラキラと写り込んでいる光はなんですか?

石田:隣でシャボン玉をやっている人がいて、それが写り込んでいます。

大森:学校は女子校だっけ?

石田:はい。私立の中高一貫の女子校です。

大森:写真を意識的に撮りはじめたのはいつ?

石田:中学に入ってすぐにガラケーを買ってもらって、初めてカメラを携帯するということを体験しました。それがものすごく楽しかったんです。それで中学2年のときに、小型のデジタル一眼レフカメラを買ってもらいました。高1で海外研修に行くきっかけがあって、その時に一眼レフではなくほかにも何かを持って行きたいと思って、小学生の時に使っていた写ルンですを思い出して一緒に持っていきました。その時がフィルムで写真を意識して撮りはじめた最初です。それからずっと学校の記録写真を撮っていました。

大森克己さん+石田真澄さん対談

ただ撮りたいから写真を撮っていた

ー 石田さんは先程、大森さんから異議申し立てとは違うところでの写真という指摘があったことについてはどのようにお考えですか?

石田:私の場合、伝えたいことがあって写真を撮っていた訳ではなく、ただ撮りたいから写真を撮っていたんです。高校生の頃は、雑誌で商業写真は見ていたのですが、作家系の方の写真集はまだみていませんでした。だから写真に何か思いをこめて撮ったり、撮った写真をまとめるという認識もありませんでした。

大森:じゃあ、何かお手本があって撮りはじめたわけじゃないんだ。

石田:そうですね。

大森:カメラは何を使っているんですか?

石田:写ルンですと、GOKOという日本製のフィルムコンパクトカメラを5台くらい、それとたまにチェキ、一眼レフカメラも使います。

大森克己さん+石田真澄さん対談

大森:写真は撮りはじめてすぐに面白いと思った?

石田:はい。写真を撮り続けた理由は、高校生という肩書から抜けるのが怖かったからでした。高校生でいることが楽しかったし、何にでもなれる、そんな無敵感から抜けてしまうことが怖かった。卒業したらもうこんなに楽しいことってないんじゃないかと思っちゃったんです。

大森:終わりが区切られているということだよね。

石田:それが怖くて、周りはそんなことを考えても気づいてもいなくて。それでそんなことに私だけ気づいてしまう時の孤独感が怖いなあと思ったときに、最後の文化祭、最後の体育祭、最後の授業というものに敏感になってしまって、それで自分のための記録として写真を撮っていました。だから、ハッピー写真ではあるのですが、実は意外とハッピーではなくて、むしろネガティブに撮っていました。

大森克己さん+石田真澄さん対談

大森:そうだったんだ。でも写真からはネガティブな感じは伝わってこないけど(笑)

石田:そうですね。高校時代の写真に関しては、よくカラッとしているとか、湿度ゼロとか言われます。

大森:自分が映ってないし、押し付けがましさやエゴがないよね。透明人間になって撮っているような感じもするけど、メチャ考えて撮っているんだろうなという気もします。高校卒業の日に向かって、「最後感」は加速していったんだよね?

石田:高3になるにしたがって撮る枚数も増えていきました。

次週公開の大森さんと石田さんの写真を巡るトーク後編は、写真を撮る理由、写真と言葉などさらに深くお届けします。お楽しみに。


  • テラススクエアフォトエキシビションVol.8
    石田真澄「A Day in the Life」
  • 住所: 千代田区神田錦町3-22 テラススクエア 1F エントランスロビー
  • 開催日時: 2017年12月7日 (木)~2018年3月9日(金) / 8:00~20:00
  • 休館日: 土曜・日曜・祝日
  • 入場無料

  • Vol.7 清永 洋「Plenum」も11月30日まで、好評開催中です。
大森克己
大森克己(おおもり・かつみ)
写真家。1963年、兵庫県生まれ。1994年、写真新世紀優秀賞受賞。アーティストのポートレート撮影、広告の分野での仕事、国内外での個展も多数。主な作品集に『encounter』(2005年)、『サナヨラ』(2006年)、『STARS AND STRIPES』(2009年 、『incarnation』(2009年 )、『すべては初めて起こる』(2011年)などがある。
石田真澄
石田真澄(いしだ・ますみ)
写真家。1999年、埼玉県生まれ。高校時代に自分の記録用に撮影していた写真で注目を集める。2017年5月に表参道のギャラリーロケットで初の個展「GINGER ALE」を開催。同年12月、テラススクエアで新作を交えた「A Day i n the Life」が開催中(2017年3月9日まで)。2018年2月、自身初の作品集「light years -光年-」(TISSUE PAPERS刊)発表。

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