写真家たちの言葉。
Above a nature.
2023.1.25

テラススクエアフォトエキシビションvol.25では3名の写真家と本展キュレーターが写真と対話をしながら、展示構成を考えてきた。会期が残り少なくなってきた今、あらためて作家たちにいくつか質問を投げかけてみた。最初の4つの質問は、キュレーターの加藤からの、残りの3つは、それぞれの作家から各作家への質問を追記とした。

野口花梨(写真家/出展作家)

Q1:「Above a nature」というタイトルをどのようにとらえ、そして、作品を選びましたか?

自然を常に変化し続けるものと捉え、それを超えるものという意味で、逆に長い時間変化していないものを撮ろうと考えました。7年前に亡くなった、新潟の祖父が趣味で描いていた絵の置いてあるアトリエを訪れ、記録しました。ここには祖父の死以降、私や祖母以外入ることはありません。ずっと変わらない光景の中に、そこに存在した人間の魂のようなものが見えました。その周辺の風景にも人と自然との交わりを感じ、その様子を写真にしました。

Q2:写真に興味をもつようになったきっかけを教えてください。

昔から美術が好きだったこともあり、なんとなく入った高校の写真部で活動をするうちに、次第に写真が好きになっていきました。その頃は、町の職人さんなど、取材的な撮影をよくしていて、被写体のルーツや生き方を知ることが楽しみでした。

Q3:どんな時に、どんなことに気がついて写真を撮影しますか?また、写真で目指していることを教えてください。

スナップは衝動的に、ポートレートは風を感じながら大胆に、風景写真はストレートに素直に、というように被写体によって意識を分けて撮影している気がします。今は難しい表現よりも、スっと心に入ってくるような、やさしい、安心感のある写真を目指しています。

Q4:普段使っている機材を教えてください。

SONY α7markIIです。

Q5:日常のルーティンを教えてください。

お風呂で熱唱しています。

Q6:憧れの人、または好きなアーティストを教えてください。

写真家の中村ハルコさんです。写真集「光の音」を読んだ時、言葉にできないほどの感動がありました。

Q7:あなたの写真におけるバイブル的なものはありますか?

好きな作家や作品は沢山ありますが、バイブル的なものはあまりないのかもしれません。

堀裕貴(写真家/出展作家)

Q1:「Above a nature」というタイトルをどのようにとらえ、そして、作品を選びましたか?

普段から何気なく使っている「自然」という概念に対し、自分自身の実際の関わり方や考え方を元に作品を選んでいます。
文明社会との対比項として使用される「自然」を考えた際に、手付かず、ありのままといった質感が先行してくることに気が付きました。
ただ、実際にそういった状況はあまりあり得ないように思えました。
では、自分が普段から接している「自然」とは一体何なのか?
僕にとってはそれは「道」と殆ど一緒であるというのが結論で、自分自身の体験を振り返った際に「道」のない自然を想起することができなかったのです。
これまで自分があまり深く考えずに捉えていた「自然」への認識を整理する意味も込めて、「道」をモチーフとして、今回の展示作品としています。

Q2:写真に興味をもつようになったきっかけを教えてください。

大学2年生の頃、当時よく一緒に過ごしていた友人が写真を始めたことをきっかけに、表現手段としての写真の存在を知りました。

Q3:どんな時に、どんなことに気がついて写真を撮影しますか?また、写真で目指していることを教えてください。

写真の中にある風景が、誰かにとっても切実な瞬間であってほしいと思っています。
写真を見ていて、その光景を全く経験していないにも関わらず、それを目の当たりにしているのは自分自身だと感じてしまう。
当事者性と普遍性が混じり合う瞬間を捉えていきたいです。

Q4:普段使っている機材を教えてください。

ここ最近までは中判のフィルムカメラでした。
今は中判のデジタルカメラをメインに使用しています。
その時々の身体感覚に適したものを選びます。

Q5:日常のルーティンを教えてください。

シガー・ロスの曲を聴くこと。

Q6:憧れの人、または好きなアーティストを教えてください。

ロニ・ホーンです。去年、箱根のポーラ美術館で開催されていた展覧会「水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?」を見て好きになりました。朗読作品が特に印象に残っています。

Q7:あなたの写真におけるバイブル的なものはありますか?

今はまだないです。身の回りで作品制作をしている人たちの制作の姿勢や考え方に日々刺激をもらっています。

渡邉りお(写真家/出展作家)

Q1:「Above a nature」というタイトルをどのようにとらえ、そして、作品を選びましたか?

タイトルを聞いた当初は、森だとか海だとか壮大な自然を思い浮かべていました。ですが、キュレーターの加藤さんから、いわゆる「自然=nature」というものに加えて、時を重ねてそこに溶け込んでいる物や、人がする違和感を感じさせない振る舞いに対しても日本語では「自然」ということがあるなど、言葉の意味での「自然」というもの自体が示すものは実は多様で、作家それぞれ捉え方が違ていてもよい、ということを聞きました。その上で本展における「自然」という概念を自分なりに再認識して取り組みました。
壮大な物だと自分としても作品自体に共感をもちにくいし、だから、自分の関わりのあるものや、散歩をしていて綺麗な物を見つけたときのような感覚で作品を選んでいきました。

Q2:写真に興味をもつようになったきっかけを教えてください。

元々は被写体を自分がしていた経験がきっかけです。
当時、自分では、あまり写真を撮っていなかったのですが、撮っていただいた方に現場に呼んでいただいたことも、写真に興味を持ったきっかけの一つです。
また、家庭環境がいわゆるサラリーマン家庭とは違い、クリエイティブに近い環境に幼い頃からいたので興味はずっとありました。さまざまな方のご縁があって、今写真をやっています。
写真をはじめたここ2年くらいで、作家や写真集などをみてドンドンのめり込んだ感じです。

Q3:どんな時に、どんなことに気がついて写真を撮影しますか?また、写真で目指していることを教えてください。

小さい頃から杞憂するタイプでした。写真は不安を和らげてくれたり、自分の悪い空想を新しい発見へと変換してくれる道具だと思っています。
単純に光が綺麗だというような理由で撮ることもありますが、撮れば撮るほど単純な動機というものが少なくなっているような気もしています。 何かと理由づけたいのでしょうか。わかりません。
ただ一つ言えるのは難しい事は正直わからない、ということです。ひたむきに長く続けられればなと思っています。
今年は、長年の空想を写真本などの形にできればと思っています。

Q4:普段使っている機材を教えてください。

メインは手馴染みがいいからという理由でニコンF3を使っています。ライカM3も使いますが、ゆっくり撮影したい時にしか使いません。 佐内さんや元々好きな荒木さんの影響もあって、風景は中判カメラの6×7で撮る機会が増えました。最近では、pentax optioやmark4にオールドレンズをつけるなどしてデジタルの撮影も積極的に行なっています。

Q5:日常のルーティンを教えてください。

よく歩きます。夜か朝に梅昆布茶か紅茶を飲みます。それと、寝ることを1番大切にしているので、寝られる時は22時には寝ています。

Q6:あなたの写真におけるバイブル的なものはありますか?

大橋仁さんの「目のまえのつづき」です。

Q7:憧れの人、または好きなアーティストを教えてください。

一番影響受けている人は、漫画家のつげ義春です。自分の暗さを作品にしてもいいんだと背中を押してくれた人だと思っています。あとは、ウェス・アンダーソンなど子供を題材に作品を作っている人の無邪気さとか、そういったものにずっと影響は受けています。

加藤孝司(テラススクエアフォト・キュレーター/ジャーナリスト/写真家/出展作家)

Q1:「Above a nature」というタイトルをどのようにとらえ、そして、作品を選びましたか?

自然を背景にもったものづくりの現場を取材で訪れることが多くあります。その際に感じるのは、自然と人間の繋がりのあり方です。人間は自然に依拠した存在で、もちろん自然の一部ですが、豊かな自然に魅せられながらも、自然の前では人間存在の無力さを感じることも少なくありません。いわゆる「自然」や、自然の一部である人間がつくった都市の造形を前にしても、それら自然に対峙した時の「越えられなさ」をテーマに普段から写真を撮っている気がします。

Q2:写真に興味をもつようになったきっかけを教えてください。

最初は、高校生の時にみたバウハウス、エド・ヴァン・デル・エルスケンやハンス・ベルメールなどの写真です。その後、1960年前後の現代美術作家、高松次郎、赤瀬川原平、ナム・ジュン・パイクらの作品を記録した写真や映像、ゴダールやアラン・レネの映像作品、「都市住宅」という雑誌に掲載されていたコンペイトウ、遺留品研究所の写真を使った都市のリサーチなどを好んでみるようになりました。その後、1990年から2000年頃に、著名性と匿名性を行き来するように、ファッション誌やサブカルチャー誌で活躍する日本の写真家たちの作品をリアルタイムでみて興味を持ちました。

Q3:どんな時に、どんなことに気がついて写真を撮影しますか?また、写真で目指していることを教えてください。

目的をもってカメラを持って、写真を撮ることが多いです。もちろん、普段からカメラを持ち歩いて目の前にあるものに反応して直感的に写真を撮ることもあります。いずれも、全体でみたときには、ひとつのイメージになるような、多様な側面を持ちえるような写真が撮れたらとは思っています。

Q4:普段使っている機材を教えてください。

近年のメインはプラウベルマキナ67、サブでフジフィルムGF670、ライカMP6+ズミルックス50mm、デジタルはライカM10+ズミルックス50mmを使っています。スナップでも、三脚を立てて撮ることが多いです。

Q5:日常のルーティンを教えてください。

お茶を飲むことです。

Q6:憧れの人、または好きなアーティストを教えてください。

これまで出会ったたくさんのアーティストに影響を受けています。日本の写真家に限定すると、ホンマタカシさんは「東京郊外」をみた時から、川島小鳥さん、今井智己さん、小野啓さん、若い方ですと、トヤマタクロウさん、石田真澄さんも好きです。でも、本当にたくさんいます。

Q7:あなたの写真におけるバイブル的なものはありますか?

牛腸茂雄さんの「見慣れた街の中で」です。

  • テラススクエアフォトエキシビションVol.25「Dialogue with photography #2 Above a nature 」
  • 住所: 千代田区神田錦町3-22 テラススクエア 1F エントランスロビー
  • 開催日時: 2022年11月21日(月)〜2023年2月17日(金) / 8:00~20:00(最終日は18:30までとなります)
  • 休館日: 土曜・日曜・祝日・年末年始 入場無料
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