KEI ONO
現在開催中のTerrace Square Photo Exhibition Vol.27は、高校生のポートレートやモールの風景の作品などで知られる小野啓の個展を開催します。以下は本展キュレーターによるテキストです。
絶対的なリアリティのある地平で、リアリティだけでは語りえないものは何か?と問うこと。小野啓のNEW TEXTをみるとき、写真におけるリアルとはなんだろうかと考える。ここで被写体となるのは正真正銘の本物の高校生である。作家が高校生の写真を撮り始めたのは2002年。それ以降現在まで、被写体募集に応募してきた高校生とメールのテキストでやりとりをし、高校生が住む街に足を運び、撮影してきた。
制服、携帯電話、それに付随するアクセサリー、SNSの写真加工アプリ、他愛もないおしゃべり。若さもまた、16歳から18歳の間の高校生にとって普遍的なものだろう。
そして、その時代を通り過ぎてしまったものにとっては、絶対的な価値観であり、自己と分かち難く結びついていながら、もう取り戻しようもないものでもある。
校舎の窓、放課後の駐輪場、雑踏の中、歩道橋の上、帰り道、コンビニ、ショッピングモール。これらは高校生たちの等身大のポートレートであると同時に、風景のポートレートでもある。それはそこに写っていない誰かのポートレートでもあり、もしかしたら「私」のものになっていたかもしれないポートレートでもある。
リアリティとは、存在として揺るぎのない、絶対的な強度、と言い換えてもいいかもしれない。
NEW TEXTが、高校生であることに限定し撮ることでリアリティを内包しているというのなら、そこにあるリアリティとは時代とともに移り変わる他律的なものである。そのことを充分承知した上で、確信犯的に高校生を撮り続けることにどんな意味があるのかと疑問符を投げかけることもできるだろう。だがしかし、写真にとってリアリティはどれほどの意味があることなのか?
小野啓はそんな絶対的なリアリティのある地平に立ちながら、リアリティだけではないものを撮る。
そこにリアルという絶対的な強度がある以上、現実以上のものを撮らないと写真は現実、あるいはそこにある思いを越えてはゆけない。
その意味で現実を写しとるのが写真であるならば、現実を越えてゆくのもまた写真なのである。
時が過ぎ去ってから未現像のフィルムを発掘するかのように、人々は写真を通じてその眼差しに触れる。そのたびにリアルとは何かを問い続けることになるのだろう。
Text テキスト=加藤孝司 Takashi Kato
- テラススクエアフォトエキシビションVol.27「KEI ONO NEW TEXT 2013-2019」
- 住所: 千代田区神田錦町3-22 テラススクエア 1F エントランスロビー
- 開催日時: 2023年5月22日(月)〜2023年8月18日(金) / 8:00~20:00(最終日は18:30までとなります)
- 休館日: 土曜・日曜・祝日・年末年始 入場無料
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