Tiny pieces on Te Araroa
2024.6.23

テラススクエアフォトエキシビションの31回目は主にアウトドアフィールドやファッションなどを中心に風景写真やポートレートを撮影する根本絵梨子氏の個展を開催します。

根本さんはこれまで国内で多数の個展を開催し、国内外のアウトドアブランドの広告などの写真も撮影されています。今回展示に選ばれたのはライフワークのように取り組み、繰り返し訪れているというニュージーランドのダイナミックな風景の中にある”小さなもの”たち。広大なこの世界はミクロレベルのとても小さなものの集合で構成されていますが、根本さんは雄大なニュージーランドの大自然の中でとりわけちいさな苔や、大地の中に転がる石や岩などの注目したといいます。ロングトレイルの途上でどんなものに出合い、何を感じたのか。春から夏にかけての大都会のオフィスビルのエントランスで、大自然の爽やかな息吹と美しい自然を感じてください。

以下、作家によるテキストです。

テアラロアというニュージーランドを縦断するロングトレイルを3台のフィルムカメラを担ぎ約2ヶ月間、1300km歩き続けた。
それだけ長い距離を歩くとなると、毎日コロコロと景色が変わった。ひたすらに延びる道を気持ちよく歩く日もあれば、膝上まで沈む泥の道を一日中歩く日もある。30もの川を渡る日、巨大な木々の森や一面の花畑、アルプスのような山々をいくつも越える日。圧倒的な自然はたやすく私にシャッターを切らせる。
ただ毎日体力の限界まで歩き続け、この先が長いと知っている私は、とにかく前に前に進みたいという気持ちがあることにも気付いていた。
もしこの道が長い道だと知らなかったら、私はどうやって歩くだろうか?
そう自分に問いかけながら歩くと目の前の景色は当たり前ではなくなり、一歩一歩が特別になった。

フィルムを現像すると壮大な景色がそこにはあった。
でもその中に、写真を撮らなかったらきっと数年、いや数ヶ月で忘れてしまうような、小さなものが紛れ込んでいた。
長い長いトレイルの上で、ほんのちょっとだけ、もしくは一瞬大きく私の心を揺らしたものたち。

根本絵梨子 Eriko Nemoto
写真家。群馬県出身。2010年より渡豪。富山大学芸術文化学部卒業後、代官山スタジオ勤務。2016年よりフリーランスの写真家として活動。『TRANSIT』などトラベルカルチャー誌をはじめ、アウトドアブランドの広告やファッション、ポートレイト、建築などさまざまなジャンルで活動。夏は北アルプスの山小屋で働きながら写真を撮り続けている。南米パタゴニアから国内の山々まで、写真を撮りながらアウトドアフィールドを旅する生活を送る。

Text=Takashi Kato

  • テラススクエアフォトエキシビションVol.31「Tiny pieces on Te Araroa」
  • 住所: 千代田区神田錦町3-22 テラススクエア 1F エントランスロビー
  • 会期:2024年5月27日(月)ー2024年9月20日(金) / 8:00~20:00(最終日は19:00までとなります)
  • 休館日: 土曜・日曜・祝日、入場無料
  • 主催:テラススクエア | 協賛 住友商事 | 企画 加藤孝司、三浦哲生
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