ANGELS POINT
現在開催中のTerrace Square Photo Exhibition Vol.28は、ロサンジェルスで活動する風景写真家のアダム・イアニエロの日本で初となる展示です。
以下、本展キュレーターの加藤孝司によるテキストです。
かつて湿地帯の草原だった場所に広がるカリフォルニアの都市、小高い丘に防風林として植えられたパームツリー、どこまでも真っ直ぐに延びる道を日々行き交う無数の車が吐き出すスモッグで覆われた空。1886年に整備されたロサンゼルスでも最も古い国立公園「エリジアン・パーク」にあるエンジェルスポイントから見渡せるものには、自然と人工物が入り混じる。そしてそれこそがこの国の歴史の偉大さや長年の課題でもあり、19世紀以来、アメリカの伝統的な風景写真が写し出してきたものでもある。
ロサンゼルスを拠点に活動する写真家アダム・イアニエロは、ここエンジェルスポイントを3年間にわたり大判カメラで撮影した。
ハリウッドサイン、グリフィス天文台、この土地の一部を切り崩して造られたドジャー・スタジアム、谷底に絶え間なく車が疾走するゴールデンステートフリーウェイ、そしてロサンゼルスのダウンタウン。
エンジェルスポイントには、この地を乱開発 から守ったカップルにちなみ、ピーター・シャイアーのデザインによるメモリアルのオブジェが建てられている。
ピクニックができる広場、雑木林の間を抜ける小道。人々が散策を楽しむこの丘には、コヨーテ、スカンク、アライグマなどの野生動物も時に姿を現すという。世界的なパンデミックが起こる以前、「シークレット・スウイング・エンジェルスポイント」と呼ばれたブランコもあった。
人々が自由に気ままに思いおもいに集う楽園のようでもあり、喪失をもたらした土地の荒廃を映し出す感傷的な風景。そして乾いた土地に生い茂る木々は癒しとともに、過去の出来事に思いを至らせる触媒となる。
アダム・イアニエロのまなざしは、ランドスケープに顕在化する混沌を写し出す。その土地が歩んできた歴史への敬意と希望を、瞑想的なイメージの中、灰色の空の下に露わにするだろう。
Text=Takashi Kato
- テラススクエアフォトエキシビションVol.28「Adam Ianniello|ANGELS POINT」
- 住所: 千代田区神田錦町3-22 テラススクエア 1F エントランスロビー
- 会期:2023年8月21日(月)〜2023年11月17日(金) / 8:00~20:00(最終日は18:30までとなります)
- 休館日: 土曜・日曜・祝日 入場無料
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