ディゾンというお店の話
2018.4.09

神田神保町の路地裏に美味しいコーヒーが飲めるケーキ屋さんがあるときいた。オーナーバリスタの本山遼介さんが切り盛りするお店の名前は「ディゾン」。フランス語で10周年を意味する言葉だ。エスプレッソマシンで淹れたコーヒーをいただきながら、本山さんにお話をうかがうことができた。

ディゾンは今年の1月にオープンしたばかりのお店。2015年にここから徒歩圏内にある水道橋に1号店がオープンしたのは2015年のこと。

「武蔵小山に本店がある“パティスリー・ドゥ・ボン・クーフゥ”の10周年に姉妹店としてオープンさせました。基本がケーキ屋のカフェ部門ということもあり、ケーキとの相性を考えてコーヒーを提供しています」。そう語る本山さんは18歳のときにこの業界に入った。「当時はスタバやタリーズがおしゃれ、という時代でした。専門学校でエスプレッソコーヒーの授業があって、こんなものがあるんだと思って興味を持ちました。以前務めていた「セガフレートザネッティ」というお店でエスプレッソとはなんぞや、コーヒーをつくること、バリスタとは?ということを教わりましたね」

ディゾンさんでは、エスプレッソベースのコーヒーを中心に飲むことができるが、そこには本山さん自身のコーヒー体験が背景にある。

コーヒーは誰もが気軽に飲むことができるデイリーな飲み物。家で、職場で、街なかの喫茶店やカフェで、コンビニで、ここ数年でコーヒーはさらに人々の生活に身近なものとなっている。

ディゾンは街に開かれたオープンなお店。アンティークやインダストリアルなインテリアは、神田という歴史のある街並み上品に溶け込んでいる。その誰もが入りやすいいい意味での敷居の低さはディゾンのコーヒーの味わいにも通じている。

「ちょうどコンビにでもコーヒーが販売されるようになって、コーヒー自体の裾野が広がってきました。コーヒーが苦手な人にも飲んでもらえるような、苦すぎず酸っぱすぎず、飲みやすいコーヒーを意識してつくっています。爽やかさが感じられる浅煎り、コクがあるもの に関してはシングルオリジン、それとブレンドをエスプレッソかドリップでお淹れしています。 」

武蔵小山の人気パティスリーの姉妹店ということもあり、来店するほとんどの人がオーダーするディゾンで人気のメニューも、ケーキとコーヒーのセットメニューだという。「ケーキとコーヒーを一緒に楽しんでいただくことで、これまでにない体験をしていただくことができるメニューを目指しています」

老舗の古書店や喫茶店が多く軒を連ねる神田神保町界隈。ディゾンの近くにも神保町らしい喫茶店、スポーツ用品店、古書店などがあるが、周辺にはオフィスや町工場などもある、下町らしさと都会っぽさが同居しているディゾンがケーキとコーヒーのお店をひらくてにあたり、意識したのも神田エリアがもつ歴史と文化だったという。「風味が強くて一度食べていただければ満足していただくことができるこだわりのケーキをつくっています。そんなものを出すには、ここにしかないというこだわりのあるお店、違いがわかる人が集まる街がふさわしいだろうと考えました。本物を伝える、そんな思いを共有することができるイメージをこの街に感じました」

「店作りに関しては敷居を低くということを意識しています。いつも考えているのは、人が何かを飲みたい、食べたいということとはどんなことか?ということです。自分もそうなのですが、 そのときどきで食べたいものって変わると思うんです。食べたいものを食べたい時に食べるのが一番美味しいですよね」

この場所に二号店を出店して数ヶ月。本山さんもこの界隈にお気に入りや馴染みのお店も出来たという。「食べ物屋さんだと、三省堂の交差点付近にあるパスタ屋さん『パスタ人』が好きでよく行きますね。それと個人的にミニチュアをつくるのが趣味で、『ウォーハンマーストア神保町』というゲーム用のミニチュアが売っているお店があるのですがそこはもう大好きですね。そちらのお店とコラボしてウチの二階のスペースでミニチュアの塗装のワークショップをやってみたいと密かに思っています」

インダストリアルな内装のディゾンの店内は、ケーキとコーヒーを楽しめるカフェでもあるが、壁にアートが似合いそうなギャラリーのような佇まいでもある。今後アートの展示など、街や人に開かれた展開はあるのだろうか気になって、本山さんに聞いてみた。「もちろんアリです。ウチの店で何かをしたいという方がいれば、特に制約もなくやりたいとことをやっていただきたいと思っています。お店づくりもそうなのですが、あまりこれ!って決めごとをしたくないと思っています。このお店自体自由な空間だと考えていますし、いい意味でこだわりをもたずにやったほうが、結局続いていくと思うんです」

通りに面した窓辺のカウンター席で気軽にコーヒーやケーキを味わうことができる一階、二階は寛いだ雰囲気で友人同士で会話を楽しみながらゆったり過ごすことができる。「ケーキもコーヒーもとにかく美味しいものをという思いでやっているお店です。リピーターさんが多くお越しいただいているので、期待に応えるように頑張っていきたいですね」と、本山さんはあくまでマイペースに気負わずそう語る。取材にうかがった日も、ひきりなしにお客様が訪れ、コーヒー片手にそろぞれの時間を楽しむ姿が印象に残った。街に、人に、そしてそまざまなことが交差する予感に満ちたこの店は、歴史と伝統のあるこの街らしい豊かさに溢れた空間だと思った。

写真と文=加藤孝司

  • DIXON (ディゾン)
  • open;8時~19時、土日祝11時~17時
  • 休日:不定休
  • 住所:東京都千代田区西神田2-7-11
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