紙編 <株式会社竹尾>
神田錦町から情報を発信するウェブマガジンensembleは、人と人、人と街とのつながりから生まれるストーリーを大切にこの街から生まれる出来事を綴っています。このたびensembleをより多くの方に知っていただくきっかけになればと思い、地元の企業の方のご協力のもと名刺を制作することになりました。名刺は人の手から人の手に渡る大切なもの。その時手に触れる紙は、人の思いを代弁する重要な要素に違いありません。ensembleの名刺ができるまでを2回にわたってご紹介します。まずは名刺につかう紙をご紹介いただいた、品質の優れた紙=ファインペーパーで知られる神田錦町に拠点を構える紙の専門商社、株式会社竹尾さんです。企画部・上席執行役員の平戸順一さんにお話をうかがいました。
ー 今回ご紹介いただいた紙について教えてください。
今回ご紹介させていただいたワイルド-FSはイタリアの紙です。ラフな質感とインパクトのある厚みが特徴で、コットンを配合しており、活版印刷とも相性が良い紙です。私どもでは海外からも多くの紙を輸入していますが、近年欧米では厚物市場というものが流行しています。海外にいかれるとみなさんびっくりされると思われるのですが、名刺交換するとみなさんものすごく厚い紙で名刺をつくられていて、5枚ほどで名刺ケースがいっぱいになってしまうほどです(笑)。というのも厚みのあるコットンペーパーでカードをつくることはひとつのステータスとなっているところがあります。欧米では名刺に限らず厚物志向というものがありまして、厚みのある紙は信頼感を与えると考えられています。日本でもDM等に厚物を使用するケースが増えてきており、竹尾のファインペーパーの商品ラインナップにも厚物を増やしてきました。そういった理由もあり、実はワイルド-FSは近日発売予定のまだ販売していない商品なのですが、今回ensembleさんの名刺にご提案させていただきました。
ー この厚手の紙にはそのような背景があったのですね。それはとても嬉しいです。どうもありがとうございました。見本帖本店といえば紙好きであれば知らない人がいない紙の専門店ですが、美しい店舗とファサードデザインでこのエリアでもひときわ端正な街なみを形成しています。こちらはどのようなスペースになりますか。
ファインペーパーに見て触れて親しんでいただくスペースとして2000年にオープンしました。1階では常時数千類のファインペーパーの中から実際に手にとっていただきご購入いただける空間になっています。2階は紙の相談スペースで、ファインペーパーの魅力を活かしたサンプルや展示、美篶堂さんとコラボしたオリジナル商品も展示販売しています。
竹尾は創業後すぐにこの神田錦町へ移り、以来100年以上この地で営業しております。現在も古書街として知られていますが、この街には書籍はもちろん、古くから続く印刷所も多く、紙と出版、印刷が密接に関わりをもっていました。弊社の現社長がこの地に生まれたこともあり私どもとしましても、この地を大切にしています。
ー 竹尾さんといえばファインペーパーですが、すぐれた品質をもつ紙というファインペーパーにはどのような思いがこめられていますか。
紙を手にとっていただくお客様に感動をしていただけるような紙というもの、そしてその開発に力をそそいでいます。そこで大切にしているのが、「心に響くものづくり」というキーワードです。それを目標に、感性に届く、五感に響く紙づくりにチャレンジしています。それは紙だけではなく、営業面でも同様です。これからの時代、お客様の心に響くということが大きく重要になってくると思っています。
ー 大阪にも見本帖がオープンしたそうですね。
今年の春に大阪の淀屋橋に淀屋橋見本帖がオープンしました。ここではファインペーパーを手に取ってご覧いただけるほか、ギャラリースペースやCAPPAN STUDIOさんとコラボした活版印刷工房を併設しています。この店の中央にはピカピカのハイデルベルグの活版印刷機を設置しています。この印刷機を使って実際に5千種類近いファインペーパーから名刺や封筒などの名入れ印刷を承っています。
ーー竹尾さんのこれからの取組みを教えてください。
ファインペーパーの開発も時代の流れのなかでひとつの転機を迎えつつあります。先ごろ行った「竹尾ペーパーショウ」では次のファインペーパーの方向性をお披露目しました。たとば、これまで緩衝材や梱包材でしかなかったモールドやダンボールが生活のなかに入りつつある現状をふまえ、それらもファインペーパーに取り込んで、何ができるだろうかということなど、さまざまな新しいことにチャレンジしました。今後も紙の少し先の未来に取り組んでいきたいと思っています。
株式会社竹尾
1899年に創業した紙の専門商社。良質な紙を意味するファインペーパーで知られ、色や質感の多様な紙を常時数千類扱う。紙を知りつくし、紙のその先の未来を提案し、クリエイターや専門家から絶大なる信頼を集める。
http://www.takeo.co.jp
写真と文=加藤孝司
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