Kanade Hamamoto,
autonoetic.
2020.10.31

流木、トタン、木片などの浜辺に打ち上げられた漂流物。古民家から発掘された色褪せた床板やレリーフの入ったガラス窓などの古材。
「漂流物」「古材」とは文字通り、どこかに流れ着いたもの、失われた時を内在させたもの、場所だけでなく時間の海を漂った由来をもったもののことであり、ある種寄る辺もないものということができると思う。

17回目となるテラススクエアフォトエキシビションは、現在活動が注目されるアーティスト、濵本奏のソロエキシビションを開催する。
濵本は一昨年より写真をメディウムにインスタレーションや写真集などで積極的に作品を発表してきた写真作家。
今年7月にはクリエイティブディレクター中村俵太によって立ち上げられた出版レーベル「hito press」の初の刊行物として初写真集『midday ghost』を発表。同時にOMOTESANDO ROCKET、STUDIO STAFF ONLYでの個展を成功させ、その後、国内を今もなお巡回中だ。

すべて新作で構成される本展「autonoetic」ではこれまでの作品に、個人的な創作への感情をさまざまなマテリアルで展開するオブジェクトに付与し、濵本が突きつめてきた物質性をともなったコンセプトをさらに深化させた濵本の現在の姿をみることができるものとなる。

展示されるのはさまざまな来歴をもった物質そのもの、あるいは写真作品が印刷されたオブジェクト。いわゆる額装された写真作品は一点もない。それらはすべて作家が自宅近くの浜辺で採取してきた漂流物、あるいは解体される民家から採掘してきたものである。作家はそれらを採集した場所で、かつてそれらが見ていたであろう景色をカメラで記憶をたどるかのように撮影し、「FLAT LABO」のプリンティングディレクターによる高度な技術で定着させる。そうやって物質がもっていた意味を受容しながら、あらたなオブジェクトへと変換し価値を更新させるという試みがここにはある。
それは近世以降だけでも200年近くにわたり、目の前の現象をさまざまなメディアの上に定着させながら、表現の上で姿を変え進化させてきた<写真>というメディウムへのある種の挑戦ともいえるものともいえるだろう。

また本展では数々の展示ディレクションや広告や雑誌などでプロップスタイリングも手掛けるhito press代表の中村俵太氏とインストーラーの石毛大介氏が参加した展示構成にも注目したい。

濵本が今回試みた表現方法がこの先どこに向かうのか?
この作家の未来をイメージする上でも絶対に目撃しておきたい展示であることは間違いがないだろう。

濱本奏 Kanade Hamamoto
2000年 横浜市生まれ福岡県育ち。東京・鎌倉を拠点とし、写真を表現の軸に活動。2018年 鎌倉にて初個展「mi-kansei」 、2019年 渋谷にて個展「reminiscence bump」、2020年 OMOTESANDO ROCKET、STUDIO STAFF ONLYにて個展「midday ghost」2会場同時開催。hito pressより初写真集となる「midday ghost」を出版。 https://www.kanadehamamoto.com

テキスト=加藤孝司 Takashi Kato

  • テラススクエアフォトエキシビション #17
  • Kanade Hamamoto「autonoetic」
  • 会期:2020年11月2日(月)ー2020年2月19日(金)
  • 住所: 千代田区神田錦町3-22 テラススクエア 1F エントランスロビー
  • open:8:00~20:00
  • 休館日: 土曜・日曜・祝日
  • 入場無料
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