「グラフィカルに見える世界」
岡崎果歩インタビュー  後編
2022.4.27

テラススクエアフォトエキシビション vol.22
岡崎果歩 『心臓』 インタビュー<後編>

テラススクエアフォトエキシビションvol.22では写真家・岡崎果歩の作品を展示中です。岡崎果歩の作品は日常のある一瞬をさりげなくとらえながら、その切り取り方はストーリーを感じさせるものです。
コントラストを抑制した淡い色調の中に、ビビッドな色が迷い込んでおり、フラットなフレームの中で視点が行き来する体験が心地よい。
写真とは映像とは異なり一瞬を封じ込めたものだが、だからこそそこには無数の物語が介在する余地を持っている。それを読み解ける数だけ、作品には別の意味が宿るのだろう。だがそれはその写真自体が規定する訳ではない。そんな軽やかさも写真というメディウムの面白さともいえると思う。写真が持つその本質ともいえるものに対する祝福とも愉悦ともいえるようなものをこれらの作品から感じるのだ。

ー 海外へ留学されていますが、留学先としてロンドンを選んだのはなぜですか?

元々、高校を卒業したら海外に進学したいという気持ちが強くありました。
ロンドンに行こうと思った理由は、『ご近所物語』という漫画の主人公が留学する場所という、とても単純な理由でした(笑)。

ー 留学先でどのようなことをされていたかを教えてください。そして、そこではどのようなことを学びましたか?

最初の3ヶ月で語学を学び、その後に大学に行きました。
1年目でファッションメディアに関するいろんな授業を受けて、その中の一つが写真でした。楽しすぎて2年目からは写真を専攻して学びました。
ビジュアルと同じくらいアカデミックリサーチが重要という教えだったので、物事や考え方の背景にあるものの大切さをそこで学びました。
ですが、何よりロンドンで得た一番大きなことは、とりあえず飛び込んでみる、という自発的な精神であった気がします。

展示「なまもの」より。

ー 先ほど少しお話がありましたが、写真家で映像作家の奥山由之氏のアシスタントも経験されていますが、そこで得たものはどのようなものでしたか?

師匠とはロンドンで出会う機会をいただいたのですが、その後すぐに大学を卒業して、日本に帰って師匠のアシスタントを経験させていただきました。その時代がなかったら、今の自分は存在していません。それくらい濃密な時間でした。

ー 今回の作品に限らず、友人や身の回りの景色など、身近なものを被写体にされることが多いと思いますが、どのようなタイミングで撮りたい!と思われるのでしょうか?

もともとがインドア気質なのと、カメラを頻繁に持ち歩いているわけではないので必然的に身近なものが被写体になることが多いです。
気持ちが沈んだときに撮りたいと思うことが多いです。写真を撮って気持ちをあげています。

ラボでの制作風景
photo:Takashi Kato

ー それは納得すると同時に、写真を撮る理由としてすごく意外で面白いと思いました。そんな岡崎さんが、ポートレートなど、人物を撮影する際の距離感など、心がけていることはありますか?

出来る限り演出を入れたくないので、その人がカメラに対して意識を向けていない時に撮りたいと思っています。
なので「撮ります!」の時よりも、自分的にはその前後の方が集中していて、だから撮影の時にはカメラを離さないということは意識していることかもしれません。
表面的でグラフィックな、その人の見たままが写った写真よりかは、その人の中身が滲み出るような、そんなポートレートを撮りたいといつも思っています。

ー ーー グラフィックという表現も独特で面白いですね。

「untitled」

でも撮るからには誰かに見られるわけで、その人の見せたい顔、見せたくない顔とかもあると思うので、それが崩れた時にわざわざ撮ろうとするなんて自分のエゴなのでは…と自問自答することもあります。ですが、撮っているときはそこまで考える余裕とかはなくて、セレクトの時や撮影前にそれを考えることが多いです。

ー お仕事でのファッション撮影やポートレート撮影と、ご自身の「作品」の違いと共通点を教えてください。

どちらも楽しい、というのは共通点かもしれません。
お仕事でも個人の作品でも、撮っていて感情があがったときにはそれを隠せなくなってしまうので、それは素直に表へ出すようにしています。
作品はマイペースに一人で撮れますが、お仕事は関わっている方の人数が多いのでいつでも緊張します。
現場のムード作りというか、皆さんの集中モードを壊さぬよう出来る限りもたつかない、とかは意識しているかもしれないです。

「心臓」より。

ー 本展『心臓』は展示と同タイミングで作品集としてもまとめられました。アートディレクションを米山菜津子さんに依頼した経緯を教えてください。

『GATEWAY』という米山さんが主宰されているオムニバス書籍があるのですが、第4号目の時に表紙と巻頭巻末に私の写真を使用してくださったことがありました。私が送ったたくさんの写真の中から米山さんが選んでくださった写真たちが、泣きそうになるくらいストーリーがあって(しかもちょっと現実とリンクしていて)、特に詳しくお話したわけではなかったはずなのですが、気持ちよく写真を扱ってくださったことがすごく嬉しかったのを覚えていました。
今回の作品集は絶対米山さんにお願いしたい…という強い意志はそこから生まれました。

ー 作品集を制作中の印象的なエピソードはありますか?

米山さんには打ち合わせで私がダラダラとお話しすることを真剣に聞いてくださり、また、普段から憤りに感じていることなどに共感してくださって、一緒に考えてくださる人生の先輩として本当に尊敬している方です。
ダメ元で泣き付いてお願いしました。快く引き受けてくださって、心から感謝しております。

作品集「心臓」。透明なビニールのカバーがかけられているデザイン。
photo:Takashi Kato

ー 比較的薄い紙に印刷された写真の束に、厚手のビニールのカバーがかかっているデザインで、とても印象的な装丁になっていますね。

装丁は何度かの打ち合わせの中で話したことを吸い上げてくださって生まれました。
ページが折れ曲がりやすかったりなど、普通は「劣化」と捉えられやすいデザインになっていると思います。
手にとった読み手の方がそれを劣化と感じるのか、様々な視点から見ていただけたらと思っています、
写真だけでなく、本のデザインでもコンセプトを反映していただけてて本当に嬉しいです。

ー 本展のリーフレットと作品集には言葉が添えられていますね。岡崎さんの写真と言葉の関係を教えてください。

写真に余白を持たせることが多いので、見る人によって感じ方が違うことが多々あります。
私はこう思って作ってますよ、というなんとなくの導線くらいになっていたら嬉しいです。
でも考えを言葉にすることはとても難しく…。あまり得意ではありません。

作品集「心臓」より。
photo:Takashi Kato

ー 作品制作も含め、今後どのようなことをしてみたいですか?

外側と内側がどちらも成熟しているような、芯の太い写真を撮っていきたいです。
写真を撮っているときに、これは映像の方がいいなあと思う瞬間が多々あるので映像もやっていきたいです。
それと最近、福岡に仕事で行ったのですが、楽しすぎて福岡にも拠点が欲しいです。それと2023年の2月頃に福岡で展示をする予定です。

ー テラススクエアの展示でみていただきたいところをensembleの読者に教えてください。

浅いコントラストを手焼きで出すために、プリンターの方が頑張ってくださったので、是非、生でプリントを見ていただきたいです。夜は結構暗く見えちゃうので、日の出ている明るい時間がおすすめです!

岡崎果歩 Kaho Okazaki
1993年 岐阜県生まれ。
ロンドン芸術大学卒業後、奥山由之氏に師事。
第21回 1_WALLファイナリスト。
2020年、初の個展「なまもの」を開催した。
https://kahookazaki.com

テキスト=加藤孝司 Takashi Kato

  • テラススクエアフォトエキシビションVol.22 岡崎果歩「心臓」
  • 住所: 千代田区神田錦町3-22 テラススクエア 1F エントランスロビー
  • 開催日時: 2022年2月21日(月)〜2022年5月20日(金)  / 8:00~20:00
  • 休館日: 土曜・日曜・祝日 入場無料
SHARE
top