写真をめぐる二人の対話。
テラススクエアフォトエキシビションvol.27「NEW TEXT 2013-2019」の被写体となるのはすべて現役の高校生。小野啓は2002年から2022年の間、全国の高校生を撮り続けてきた写真家。アユニ・Dは楽器を持たないパンクバンドBiSHのメンバーとしての活動、ソロプロジェクトPEDROでも注目を集めるアーティストだ。今回そんな二人の対談が写真展の会場であるテラススクエアで実現した。お互いの活動からそれぞれの高校生時代、そして写真をめぐる話にまで話題は及んだ。
あの時を写し出す写真というリアル
ー 今回の対談のきっかけは、以前小野さんがアユニ・Dさんの撮影をされた際に、小野さんの作品である「NEW TEXT」と「青い光」をみていただいたことに始まります。その際アユニさんの写真に対する言葉が興味深く、その続きをしたいと希望されたそうですね。それで今回テラススクエアにアユニさんにお越しいただいた経緯があります。小野さん、まずはそのあたりからお話いただけますか?
小野:はい。写真集とプリントをみていただい時に、アユニさんが「生々しい」とおっしゃていたことが記憶にずっと残っていて。それってすごく写真的な言葉だと思ったし、普通ポートレートを見てあまりでない言葉だと思ったんです。それを聞いて、僭越ながらこの方は言葉の人なんだと興味を持ちました。それと、僕が写真の話をした時に、アユニさんの目が、ものをつくる人の目に変わった気がして。あの時は時間もなかったので、もう少し写真の話をしたいと思ったのがきっかけです。
アユニ:ありがとうございます。
小野:NEW TEXTのポートレートの作品についてどう思われましたか?
アユニ:生々しさもそうですし、純粋さ、無垢さ、自分もその年代の時はそうだったのですが、初期衝動や、右も左も分からないけど、自分の欲望もあって。でもその出し方も分からなくて、もがいている感じがまざまざと写っている作品だと思って、すごく興味を持ちました。
神田錦町テラススクエアにて。photo:Kei Ono
アユニ:でも、今日、テラススクエアの会場でNEW TEXTの作品たちをきちんと額装された大きなプリントとして拝見して、あらためて感じたのは、最初に感じた無垢とか、そんな感じだけではない、複雑さです。みればみるほど味わい深い作品だと思いました。ここには一人ひとりの人生の物語があるし、多様なんだということを感じました。
小野:複雑さとは、それぞれの高校生が抱えている内面の在り方ということでしょうか?
アユニ:はい。眼差しやポーズに表れているものから一人ひとりの内面がより見えてきたというか。ここに写っているものはその人の存在もそうだしリアルなもので、嘘偽りのない「ポートレート」だと思いました。
でも、一人ひとりが持つ撮られたいという思い、そして小野さんの撮りたいという思いが重なったからこそ、リアルだけではない、現実と非現実との塩梅の複雑さを感じました。それは展示を拝見しながら小野さんが一枚一枚作品の背景を教えていただいたから思ったのかも知れませんが。
アユニ:それと、小野さんの「モール」をみた時にも感じたのですが、自分もそうだったかもしれない、という共通体験が描写されているようにも感じました。私にとっての高校生活は「何気なく通り過ぎていった制服を着た時間」でした。でもここに展示されている作品たちは、リアルなのにアート作品のようにつくり上げたもののようにも感じられて、とても魅力的な作品だと思いました。
ー 僕もDMのテキストに書いたのですが、小野さんのNEW TEXTをみて、なぜだか写真が持つ「リアリティ」について考えてしまいました。
アユニ:読ませていただきました。私が感じたのと近いことが書いてあってびっくりしました。
小野:お二人のお話を伺って、あらためてリアルの匙加減が独特な写真なのかなとちょっと思いました。今回あえて展示にはキャプションなどは入れていないのですが、アユニさん的にはどうですか?というのも写真集「NEW TEXT」には撮影年と撮影場所、「青い光」には個人的な記号のようなものを入れているのですが。
アユニ:どうだろう…….。見る人にもよるだろうし、本当に人それぞれだと思います。私は知れば知るほど興味や愛着が湧くタイプなので、背景を知りたいとは思いますが、写真だけの潔さ、シンプルさには、リアルとは別次元での写真から滲み出る想像力を喚起する力があるとは思います。
「NEW TEXT」と「青い光」。
私たちが高校生だったころ。
ー お二人はどんな高校生だったんですか?
小野:僕は90年代に高校生でした。メディアにコギャルが出始めた時代で、僕は滋賀県の山の上にある高校に通っていたのでみたことはありませんでしたが。
アユニ:ルーズソックスとか!
小野:そうです。コギャルはみたことはなかったけど、ルーズソックスを履いている同級生はいました。当時はやりたいことはあるけど、どうしたらそれができるのか分からなくて、気持ちだけがあって悩んでいるような高校生でした。 ひとつ今でも覚えていて不思議だったのが、最初教室に入った瞬間、ここでの3年間は自分の人生において重要なものになると思ったことです。でも僕はその光景をある種、外側から客観的にみている感じで、気持ちばかりあって表現できない日々でもありました。
アユニ:私もそうでした。小野さんもそうだったんですね!
小野:絵を描くのが好きな子供でした。写真に興味を持ったのは高校生の時でした。悩んでいた時にカルチャー誌に載っている写真をみることが癒しで、なかでもロッキング・オンから出ていた「H」、それと「switch」などのカルチャー誌が好きでよくみていました。
それで後から知ったのですが、その誌面の僕を癒していた写真は「写真家」という人が撮っているものであること、そして「作品をつくる写真」があるということも知りました。
あと、時代的にはヒロミックスさんの写真とか、当時はフィルムのコンパクトカメラが流行していて、富士フイルムの「写ルンです」が爆発的に流行していました。でもそれは”リア充”な人たちが撮るイメージで、僕はその中に入ることはできませんでした。
アユニ:あはは。「写ルンです」ってそんな前からあったんですね。
ー 「写ルンです」は1986年に発売されたレンズ付きカメラです。
小野:アユニさんはどんな高校生だったんですか?
アユニ:なんの変哲もない高校生でした。中学生の時から表現欲求が強くて、インターネットが大好きで、歌いたい、踊りたい、何かを作りたいと思っていたけど、表現の仕方がわかりませんでした。
自分から友達をつくることもなく、殻に閉じこもった、今思えば過去の自分を殴りたいくらいの極めて自己中心的な高校生でした。授業が始まるギリギリに学校に行って、一言も喋らず、終業のチャイムがなった瞬間に誰よりも早く帰る。そんな自分が嫌でたまらなくて家に帰ると母に泣きついていました。
でも、そんな自分にも憧れや好きなものがありました。それがアイドルやアーティストという存在でした。ある年、BiSHがメンバー募集をしていると知ってオーディションを受けました。だから高校には1年半ほどしか通っていません。当時はとにかく自分を変えたい!と思っていました。
Photo:Kei Ono
Photo:Kei Ono
小野:教室で人を寄せ付けなかったのには何か理由があったんですか?。
アユニ:単純に一匹狼がカッコいいと思っていたんです。変ですよね。でも正直なところは、人と話すのが怖かったんです。自分のことが嫌いだったし、そのためにも他人を全員嫌いになる方が自分を守るためにも楽だったんだと思います。
ーいつどのような心境の変化があったのでしょうか?
アユニ:人の優しさにふれてからです。
小野:それはまわりのスタッフさんということですか?
アユニ:それもそうですし、一緒にお仕事をさせていただく尊敬するアーティストの方、ファンのみなさん、友達、家族もそうです。
小野:先ほど表現はしたかったけど、その仕方が分からなかったというのは、アーティスト、アイドルになるためのということですか?
アユニ:絵を描いたり、写真を撮ったり、ものをつくったりということではなく、自分の身体を使った表現ということです。
小野:アユニさんはBiSHとしての活動をするために高校を中退されて東京に出てこられましたよね。以前、僕の最初の写真集「青い光」の表紙をみて、すごくいいとおっしゃっていただき、すごく嬉しかったのを今でも憶えています。
その時はアユニさんの故郷である北海道で撮った写真だからそう思ってくれたのかと直感的に思ったのですが、もしかしたら、ここに写っている高校生たちが、自分とは違う高校生活という時間を過ごしていることについて何か感じられたのかと思ったのですがいかがですか?
アユニ:不思議なことにあまり長く過ごしていないのに、これまでの人生を振り返って高校生時代が一番長く感じます。それは多分苦痛の時間が多かったからというか……。中学時代は活発な女の子だったし、BiSHに入ってからも怒涛の日々で毎日が充実しているし逆に短く感じるんです。後悔はありませんが、高校に通っていた時期は私にはもの凄く長い時間のように感じられます。だから、小野さんの写真に写っているコたちの姿を見て、私にはない時間を過ごしていて羨ましいという感覚はありません。でも、このコと深く知り合ったら、違う思いを抱くかもしれないです。それは分からないです。
ー深いですね……。
「とにかく自分を変えたいと思っていました」
小野:アユニさんが高校生の時に、僕が全国の高校生の写真を撮っていると知ったら応募してくれましたか?
アユニ:高校生のころは自分の身体を使った表現欲求が大きかったので、知っていたら確実に応募していたと思います。当時の私は写真には無知でしたが、何ものかになりたいという欲望をずっと持っていました。
それこそ明るいタイプではなかったけど、”存在証明”をしたいという思いばかりが大きくて、甘えかもしれませんが、誰かの力を借りて作品になりたいという欲望がありましたから。
小野:それは全然甘えじゃないと思います。
アユニ:その点では小野さんに撮られているコたちが羨ましく思います。
小野:でも、20年間撮り続けてきて感じるのは、写真に自分を残したいという動機は人それぞれだけれども、今思えばアユニさんのように思っている人たちは多かった、ということ。
だから、誰にも言わずに僕にメールをくれて、たった一人で約束した場所に現れて、撮影が終わったら別れる。NEW TEXTの写真を見て、最高の瞬間を自らつくって作り物の表情をしていると思っている読者もいるかもしれないけれど、本当は多分そうではない。普段誰にも見せない姿を表したいとか、作りものではない表情をしているんだと僕自身は感じていて、NEW TEXTがそういうひとつの場所、になればいいと思いながら続けていたところがあります。
「全然甘えじゃないと思います」
アユニ:今だから分かるのですが、どのコたちもみんなそうだったんだと思います。だからこそ作品としての強度があるのかな。
小野:僕にとってはそんな人たちとの出会いがなければ写真家として活動をしてこられなかったし、とてもありがたい存在です。2013年に「NEW TEXT」として本にまとめてからも募集は続けていて、それ以降は本にすることができた恩返しのつもりでやってきました。綺麗事として言いたくはありませんが感謝しながら撮り続けてきました。だからこそ、今回テラススクエアで展示している2013年以降のものは、作為のない素直な写真行為から生まれた写真でもあって。そんなこともあって今回の展示作品の立ち位置は自分でも少し不思議で、純粋な写真、とも言えるのかもしれません……。
アユニ:私も作品を作っていますが、ものづくりって肩の荷が下りるまで時間がかかるし、雑念がないというか、下りてからが楽しいんだろうなと今の小野さんのお話を聞いて思いました。
小野:あ、なるほど。自分ではそうは思ったことはないけど、自分の作品をそのように批評していただけるのはとても新鮮です。
アユニ:ふふふ。
分からない存在を知りたいから撮る。
ー写真学校に通っていた2002年から20年もの間、作品を撮り続けてこられましたが、小野さんにとって高校生とはどのような存在ですか?
小野:最初に撮影したのが、大学を出て写真の専門学校に通っていた25歳の時でした。20年の時を経て、今となっては僕も年を重ねてはいますが、高校生に対して感じるのは一番分からない存在だということです。
ー分からない存在…….。
小野:そうです。自分にとって分からない存在だからです。何を考えているか分からないところが少し怖いところでもあり、気になる存在です。それが写真を撮ることで見えてくるなら撮りたいと思いました。
アユニ:なるほど。
小野:写真を撮り続ける自分の中には一貫して、人間とは何か?という大きな問いがあります。高校生という存在はそれを一番体現している年齢なのかなと思っています。子供でもないけど子供でもある、かといって大人でもない、どこか宙ぶらりんな存在だけど、将来のことを考えてメチャクチャ悩んでいる。自分にとってはその様が最も人間らしいと思ったんです。写真家としてそこに向き合いたかった。しかもそれを単に青春像として捉えたくなかった。ひとりの人として向き合いたかったし、人間として捉えたかった。それがこのNEW TEXTです。
ー大人という年齢になれば多くの人が3年間だけは高校生だった可能性があったはずなのに、それでも分からない。自分もそうだけど、人間でありながら人間存在というものは分からなすぎるということですかね。
小野:自分の体験として、先ほど少し話しましたが、入学式の日に高校の教室に入って、ここでの3年間は何かある、と感じたことから始まっています。それからも何か表現をテーマにするならこれにしたいと思っていて、それが自分の場合写真だったということだったんだと思います。
ー アユニさんはアーティスト活動をするアーティストという、私たちが想像し得ないような特別な存在です。アーティストとして応援してくれる人たちを「見る・ふれ合う」こと、そして他者から「見られる」こと、その「見ることと見られること」の関係は「写真」と似ているようにも思ったのですが、アユニさんはどう思われますか?
アユニ:BiSHに入りたてのころは、表現欲求を満たしたい、何者かになりたい、純粋に人に好かれたいという欲で歌ったり踊ったりしていた部分はありました。でも今ではそんな欲は全くありません。今の私にとって衣食住と同じくらいBiSHがライフワークとしてあって、生きることと同じくらい死なないためにやっているところがあります。だから、「見る」「見られる」というお互いがライブ会場で過ごす時間は、互いにとっての生存確認だと思っています。睡眠をとる、ご飯を食べる、栄養補給をする。清掃員(BiSHのファンのこと)と会ってお互い栄養補給をするという感覚が今は一番強いです。だから、その「見る」「見られる」という関係は写真とはちょっと違うのかなとは思いますが、BiSHというアーティストとして作品をつくり上げることとは別に、解散することが決まっているから、人と人とのコミュニケーションという感覚が今は大きいです。
ー そこに人としての大きな成長があったと。
アユニ:そうだったらいいです。高校生の自分だったらそんなことは絶対に思わなかったと思います。撮られたいと思うだけで、撮ってくださる方の気持ちや、ましてや恩を感じるなんて心の余裕は、自己中心的で狭い惑星にいた高校生だった自分にはありませんでした。いろいろ変わったと思います。
ー 小野さんは作品以外にも、お仕事でたくさんのアーティストの方などを撮影されています。今回のアユニさんのように撮影とは別にお話しする機会はあるものなのですか?
小野:いや、とても珍しいことだと思います。アユニさんは写真についての興味もそうですが、写真をみることがお好きなのかなとおもいました。それと、写真家に対する理解もお持ちな方だなと思いました。
アユニ:なかなか行けませんが、写真展をみるのは好きです。自分の狭い部屋から連れ出してくれるような感覚に生きがいを感じるというか、その写真家さんがみた世界をお裾分けしていただいているような気持ちになれるところが好きです。
撮ることに関しては、目に見える記憶として記録が残るということが私にとっては大事で、今の自分にとって写真を撮ることは生活に欠かせないもののひとつです。
アユニさん愛用のカメラ。左)KYOCERA SAMURAI ×3.0、右)CONTAX T2 チタン
ー ご自身でもフィルムのカメラで写真を撮るんですよね?
アユニ:はい。でもフィルムで日常を気軽に撮るということはあまりできなくて。
小野:僕もそうですよ(笑)。今日愛用しているカメラをいくつかお持ちいただきましたが、黒のチタンのコンタックスT2は珍しいんじゃないですか?
アユニ:見た目が気に入ってメリカリで買いました。PEDROのツアーの際にはいつも持ち歩いていたカメラですけど、最近シャッターが切れなくなっちゃって、壊れちゃったのかな。
小野:ちょっと高いけどいいカメラですよね。京セラのサムライも使っているんですね。緑のシナバーリングも珍しい?赤はよく見ますけど。アユニさんはレアなカメラが好きなんですか?
アユニ:え、そうなんですか?あまりカメラのことは詳しくないのでたまたまです……。
小野:デザインでカメラを選ぶのもカメラの選び方としては正しいらしいですよ。デザイン的に気に入ったカメラを持つ方が、その人のスタイルに馴じむんだとか。僕がいつも使っているのはペンタックス67という中判フィルムカメラです。
小野さんの愛機PENTAX 67を持つアユニさん。
アユニ:大きいですね。わ、そしてこんなに重いんですか!シャッター切ってみてもいいですか?うわー、気持ちがいい。鳥肌が立ちました。
小野:NEW TEXTも大体このカメラで撮っています。あとは同じ中判フィルムカメラのマミヤ7というカメラも使っています。
アユニ:フィルムカメラは好きなのですが、普段写真を撮るのはiPhoneです。以前は食事の写真を撮ることはなかったのですが、最近はiPhoneで毎日食べたものを記録しています。日常の写真も、これまでは目に見えて過ぎていくものを記録として残したくないという反骨精神がずっとあったから全然撮らなかったけど、最近は記録したい、残したいと気持ちが変化してきて撮るようになりました。
アユニさんが愛機KYOCERA SAMURAI ×3.0撮影した写真。Photo:AYUNi D
小野:いつくらいから変化したんですか?この仕事をしてさまざまな経験を重ねてからということですか?
アユニ:BiSHに入ったここ数年です。学生時代は人が嫌いで、世の中は腐っている!くらいに思っていたひねくれた斜に構えているタイプの人間でした。BiSHに入ってからはいろんな出会いもあって人の優しさを知って、人間になってきたんです(笑)。写真を撮るようになったのもそれからです。
小野:その時にカメラが欲しいと思ったんですか?
アユニ:カメラはソロでお仕事をさせていただくようになってからです。大好きなアーティストの方たちと全国ツアーで旅をして、美味しいものを食べて、笑って、という瞬間が愛おしくてたまらなくて。その瞬間をカメラで収めておきたいと思うようになりました。ツアーには映像作家のエリザベス宮地さんも帯同してくださっていて、そのお仕事を身近で拝見した影響もありました。
とにかく今、この瞬間を忘れたくないと思いましたし、未来も楽しみに思えるようになったこともあって、その時にきちんと見返すことができるものを残したいという思いで、フィルムカメラで写真を撮りたくなりました。
でも、自分にとっての特別な時間を他人に共有するのは好きではないので、誰かに写真をみせるということは今でもあまりしていませんね……。
ー 最後にお二人の今後のご活動について教えてください。
アユニ:BiSHとしての活動もあと僅かですが(対談収録は2023年5月)、これからもものづくりはずっと続けていきたいです。歌と踊りのお仕事もそうですが、これまでは誰かのおかげでできてきたことが多かったので、これからゼロから関われるようなことにもチャレンジしていきたいです。これからは自分の時間がたくさんできると思うので、やりたいことを全部やりたいと思っています。
小野:僕は今、NEW TEXTの活動をまとめて一冊の本を作りたいと考えています。
アユニ:写真集「NEW TEXT」のあとの、ですか?
小野:はい。写真集「NEW TEXT」には高校生を撮りはじめた2002年から2012年までの10年分を収めています。今回のテラススクエアでの展示は写真集のあと、2013年から2019年のパンデミック前の7年間の写真を展示しています。実はNEW TEXTは2022年で一旦完結したのですが、コロナ禍にも全国の高校生を撮影していて、今その10年分をまとめた本を作りたいと構想しているところです。
アユニ:わ、ほんとですか?今日の展示をみて更に興味が湧いたので、ぜひみてみたいです!
10年記録し続けることって、もの凄い信念がないと出来ないことだと思います。小野さんのその信念の強さがこの作品をみる全員に伝わって欲しいです。
時代の流行は高校生が作っていると言っても過言ではないと私は思っています。小野さんが写し出した写真には、10年分の時代の流れや一人ひとりの思いまで、その時代が記録されていると思います。
それと、先ほども言いましたが、小野さんのNEW TEXTをみていると憧れの気持ちが沸いてきます。高校生だった私自身にも、今の自分をしっかり誰かにみていて欲しい、記録して欲しいという思いがありました。未完成な年頃の完成形を撮影してくださっているというか、このあと人としてどう完成していくのかを想像させてくれる写真としての魅力があると思っています。
でも写真の撮影って簡単にできるものでもあるけど、ここまでの密度を持って臨む関係性ってきっと稀有なことですよね。そんな密度の濃さが小野さんの写真には絶対にあると私は思っています。
小野:ありがとうございます。その際にはぜひコメントを寄せてくださると嬉しいです。
アユニ:もちろんです、ぜひお願いします!
AYUNi・D(アユニ・D)
10月12日生まれ。北海道出身。2016年より、“楽器を持たないパンクバンド”BiSHメンバーとして活動。ソロプロジェクトPEDROではベース、ボーカル、全楽曲の作詞、一部作曲までを手がける。
KEI ONO(小野啓)
写真家。2002年より日本全国の高校生のポートレートを撮り続け、写真集『青い光』(2006)を経て、10年間の集大成となる『NEW TEXT』(2013)を発表。その他作品集には、『暗闇から手をのばせ』(2017)、『男子部屋の記録』(2019)、『モール』(2022)がある。『桐島、部活やめるってよ』(朝井リョウ)、『アンダスタンド・メイビー』(島本理生)など装丁写真も数多く手がける。『NEW TEXT』で第26回「写真の会」賞受賞。
まとめ、写真=加藤孝司 Takashi Kato、協力=庄司洋介 Yosuke Shoji
- テラススクエアフォトエキシビションVol.27「KEI ONO NEW TEXT 2013-2019」
- 住所: 千代田区神田錦町3-22 テラススクエア 1F エントランスロビー
- 開催日時: 2023年5月22日(月)〜2023年8月18日(金) / 8:00~20:00(最終日は18:30までとなります)
- 休館日: 土曜・日曜・祝日・年末年始 入場無料
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