誰も第一線を走らない時代を生きる。

モノやコトに溢れ、情報が多様化し、何を求めどう生きるのか、単なる量ではなくその質が問われる現代。そんな時代に生きるいま活躍が期待される若手アーティストにインタヴューをする企画をensembleでスタートします。第一回目は現在19歳の写真家と音楽家兼モデルとして活動する二人との鼎談をお送りします。僕が彼らと出会ったのは、神田錦町にあるテラススクエアで行なわれた、彼らと同じ齢の写真家である石田真澄さんの写真展のレセプションでした。彼らの言葉から世代と性別を越え、今の時代を生きる意味を浮かび上がらせる試みです。

ー いま年齢はいくつですか?

青木:19歳です。

岡崎:僕も19歳です。

ー 誕生日は何月ですか?

岡崎:10月です。

青木:僕は12月です。

ー 出身はどちらですか?

岡崎:生まれてから小5まで滋賀で、それからは富山、高校を卒業して昨年東京にでてきました。

青木:僕は秋田生まれで、そのあと町田、昨年の9月から都内です。

ー 二人は一緒に暮らしているそうですが、一緒に住みはじめたきっかけを教えてください。

青木:共通の仲間の集まりで出会って親しくなって、目的的に一致したから一緒に住みました。

岡崎:青木と出会った時、僕は高校を出て会社務めで寮で暮らしているときでした。

青木:僕も大学を辞めて実家を出たいと思っていたタイミングでしたのでちょうどいいなと。

青木柊野氏、岡崎圭吾氏インタヴュー

ー 現在の職業は?

岡崎:僕はフリーランスのモデルです。

青木:僕は写真家で、今は写真作家の山谷祐介のアシスタントもしています。今日はどんな話をすればいいんですか?

ー ありのままで。僕も含めて二人との関係性をドキュメントできればと。こっち(東京)に住むようになった理由は?

岡崎:僕は就職です。高校生の頃から富山のデザイナーのショーやアーティストの PVに出演したり、東京にはモデルとして何度か来ていて東京の人と思われていたところもありました。それでこっちに来てからも仕事の合間にモデルもしていたのですが、今年の1月にヨーロッパのメゾンである「べトモン」のショー出演でパリコレに呼んでもらって、そうそう休んでもいられないので、けじめをつけて勤めの方は辞めました。

ー 僕が二人に会ったのは、石田真澄さんのテラススクエアフォトエキシビションのレセプションでしたね。まわりの同世代とのコミュニティはどんな人たちが集まっているんですか?

青木:美大生、グラフィックデザイナー、役者、モデル、写真家、音楽をつくっている人がいたり、いろいろな人がいます。

ー 青木くんは写真家としても活動をしているけど、これまでもいくつか展示をしていたんですよね?

青木:はい。これまで湘南の蔦屋書店T-SITEと、青葉台にある「みどり荘」というギャラリーで個展をしました。

ー 写真をはじめたきっかけは?

青木:高校一年までサッカーをしていたのですが、怪我で出来なくなって何をやろうかというときに、身近にカメラがあってそれがきっかけといえばきっかけです。 だから最初はあまり意識せずに写真をやっていたのですが、高2の時にマイク・ ブロディーという写真家が18歳の時に、非合法的な手段を使って貨物列車でアメリカ大陸を移動するトレインホッパーという人たちを撮った「RODIE : A PERIOD OF JUV」という写真集をみて、アートフォトというものを知りました。それからは写真を撮る行為自体を意識して撮るようになりました。

青木柊野氏、岡崎圭吾氏インタヴュー Syuya Aoki

ー そこから青木くんの写真を撮る感覚が、単に日常を撮るということからアートフォトというものにシフトしたんですね。

青木:そうです。意味付けではありませんが、写真を撮る行為自体に意味をつけはじめたのが高2の頃です。

ー 最初に作品を発表したのも写真展ですか?

青木:高3の12月に「shell」というタイトルのZINEを武蔵野美術大学の基礎デザイン科の星加陸と一緒につくったのが最初です。それに関する展示が高3の冬にやった湘南T-SITEでの展示です。

青木柊野氏、岡崎圭吾氏インタヴュー Syuya Aoki

ー その作品はそれまで撮影した作品をまとめたものだったのですか?

青木:いえ、「shell」はその作品をつくるにあたり撮り下ろしたものになります。 どんな作品かというと、写真を写真で包んだ作品です。shellには見せかけ、外観という意味があるのですが、当時まだ17でしたが、未熟で、見せかけだけかもしれないけど、いいものはいい!という若気の至りでつくった作品でした。 この作品は今見返すととても面白くて、新聞紙などに使われる紙に写真をプリントしたものなんですけど、作品そのものをヤスリで削ったり、水で濡らした写真にダメージを与えたものです。写真にダメージという点は、今も意識しています。従来の写真とか写真集には絶対できないやり方で全てハンドメイドで100部作りました。

ー そこから作家性を意識しはじめた?

青木:その頃はまだ意外とそうでもなくて、漠然としていたかもしれません。作家性というものを意識しはじめたのはつい最近な気がします。東京工芸大の写真学科を辞めてアシスタントについたり、それこそ圭吾と一緒に住むようになってから、「写真とはなんぞや」「音楽とは」という話を二人でよくするようになりました。そのころから写真を撮る理由や、撮るという行為を考えるようになりました。

青木柊野氏、岡崎圭吾氏インタヴュー Syuya Aoki

ー 現代ではインスタグラムやタンブラーなど、ウェブ上で作品を発表する機会も増えていると思うけど、ZINEや写真展などリアルな場で作品を発表する理由は?

青木:年齢の近い世代の仲間で展示とかZINEというカタチで作品を発表している人は、まだまだ少ないと思います。SNSで写真をUPして完結している人が多いように感じます。それが悪いことだとは思いませんけど、僕が展示や紙とか空間や物体を大切にしているのはまず、みる人が携帯やPCのモニターでみるのとは、作品から感じるものの質量、みたときに入ってくる重量といったものが違うと思うからです。写真の質量みたいなものはずっと意識しています。

ー このあいだ豪徳寺のレストラン「バレアリック飲食店」で行った二人の一夜限りの展示は面白かったですね。

岡崎:あの時は、僕の東京での一年の過程を青木が新たに撮り下ろした写真を展示した一夜限りの展示でした。友人でもあり、ルームメイト、第三者としての視点から、僕の人生を表現した作品でした。

青木:あの時の展示では特にステートメントは出していません。あえて意味はみてくれる人には直接伝えなくてもいいかなと思いました。ルームメイトという、家族でもなく、友人ともちょっと違う僕から見た圭吾の過程を撮影したものなのですが、あれは面白かったですね。5時間だけの空間を僕の写真と圭吾の音楽でつくる。あの一夜だけの空間はうまくつくれたかなと思います。

青木柊野氏、岡崎圭吾氏インタヴュー

岡崎:あそこでやりたかったのは、そこにいた人しか体験できないものでした。伝えたい対象も、自分たちが知らない人たちではなく、これまで僕らと何らかのつながりがある人たちでした。友達とその友達くらいの人だけが集まれる場所をつくることが重要でした。あの日にあれだけの人が集まったのはそういうことだと思うんです。

ー 告知はインスタやHP以外は、ほぼ口コミだったんだね。

岡崎:はい。つながっているけどつながっていない、という意味の「コネクト・アンコネクト」がテーマだったのですが、最終的に80人ほどが集まりました。あの日来た人たちは、僕と青木と個人的にどこかで繋がっている人たち。青木や僕の友達でも、友達の友達といった感じで繋がっているのがこの時代のいいところだと思っていて。加藤さんもそうですよね。みんなが集まり、エキシビションが終わってその場所を離れても、来た人たちに、あの場所に戻りたいと思ってもらえれば嬉しい。だからこれからみんなが大人になっても、またいつか僕が何かをしたら、また集まってくれたら嬉しいと思っています。だから、あのイベントもあのときの写真の展示も一夜限りのものなんです。

青木柊野氏、岡崎圭吾氏インタヴュー

青木:例えば、一夜限りイベントでも、来た人がインスタに上げれば、それをみた人たちも行った気になれる。当たり前なことだけど、その場所にいないとその時の温度感も、そこでみんなが感じたもの、そこで話したことも伝わりません。作品も一点をのぞいて全てこの展示のための撮り下ろしでした。プリントも以前在籍していた大学のプリンターでやりました。写真はインスタやウェブで見られるけど、実際のプリントとモニター上でみる画像とでは質量が違うと思うんです。スマホやパソコンでみて、それでみた気になってしまうのが、少しイヤで。ぼくはもっと生な感じを大切にしたいと思っています。

ー 僕は二人よりだいぶ長く生きているけど、思うのは密度があるものって、 時間的には一瞬でも、10年後、20年後に振り返ったときに、あの時が始まりで、ターニングポイントだったということはよくあるんだよね。

岡崎:そう思います。だから老舗のお店とか、僕はそういうのが一番しっくりきます。そういう場所が自分たちの居場所だと思うし、自分たちもそういう場所をつくりたいと思っています。でも、そこに来たから次の何かにつながるというメリットではなく、会った仲間同志が、久し振りだねえとか、友達と友達が自然につながったり、そういうのでいいんです。だからずーっとこれからもみんなが仲が悪くならなければいいなと思いますね(笑)。でも、フォロワーが多い人や、有名だからというだけで誰かを呼ぶようなイベントには興味がありません。自分たちがやっていることに自然に価値が付いてきて、人に何かを与えられているという実感がもてるようになれば、例えばそれをビジネスに変えていっても悪い気はしません。

ー でもこれから先、知名度が上がったとしても、いまの友達と有名になってから出会う人とはぜんぜん違うと思う。

岡崎:どうなるんですかね。

写真と文=加藤孝司