WeWorkで新しい”働く”を創出する(前編)
2017.12.28

2018年にはいよいよ東京にも開設予定の世界中に多くのネットワークをもつ世界最大のコワーキングスペース、「WeWork」。2010年にニューヨークでスタートしたWeWorkは現在、16万人以上のメンバー、世界17カ国51の都市に155以上のスペースを有する。サービス、ローカルのスタッフがハブとなるコミュニティ、建物、心地よい雰囲気づくりを含めたスペース。そのいずれもがWeWork独自の高いクオリティを誇る。先日神田錦町のテラススクエアで行われた「ドットフェス」でも、新たに展開される日本のWeWorkのデベロップメントディレクターであるWeWorkのエビー・ワイズカーバーさんがプレゼンテーションし、大きな話題となった。日本ではソフトバンクとの合弁会社を立ち上げるWeWork。ますます注目されるその活動についてエビーさんに話をうかがった。

WeWorkのこと

ー まずはebbieさんの経歴とWeWorkでの役割を教えてください。

大学で建築を学んだのちアメリカのスティーブン・ホール・アーキテクツなどで建築家として12年間働きました。大阪の竹中工務店でインターンとして働いた経験もあります。WeWorkで働きはじめた経緯としては、建築のネットワークの一人がWeWorkのことを教えてくれたことでした。外からみるとウィワークはコワーキングの組織のようにみえますが、中に入ってみると空間のデザインから営業まですべてが揃った会社であるということがわかります。それで友人は私を推薦してくれたのだと思います。WeWorkに入社して2年ほど経つのですが、最初はシニアプロジェクトアーキテクトとしてシドニーの二棟の建築の立ち上げプロジェクトに携わりました。そこでWeWorkのプロジェクトの一連の流れを見られたことはとても勉強になりました。その後はアジア圏の開発に携わるようになりました。これまで上海、そしていま東京に取り掛かっている最中で、11月初旬から東京に住みはじめました。

ー 建築家としての経験はWeWorkではどのように生かされていますか?

建築や空間のデザイン、それを施工するところまですべてのプロセスに生かされています。自分としてもそこに魅力を感じて入社しました。私が務めたスティーブン・ホールの考え方としては、建築は外観やデザインだけでなくて、そこで活動する人たちがどのようにふるまい、経験をするかということを重視していました。それはWeWorkとも共通するもので、建築家としてのスキルがここでも生かされています。プロジェクトマネージングをしてみてよかったのは、建築を建てるということもそうですが、人々がどう動くかということのマネージメントまでできることでした。あとは、夜遅くまで働くというスキルも学びました(笑)

ー WeWorkはまだ日本にスペースがオープンしていませんが既に大きな話題になっています。ウェブサイトによれば、六本木、丸の内、新橋、丸の内と、まずは東京での開設が進行中ですね。そこで、ドットフェスでのプレゼンでも、WeWorkはコワーキングスペースではなく、グローバル・ネットワークだとおっしゃっていましたが、WeWorkが目指すものを教えてください。

いまご指摘いただいたように、自分たちでもWeWorkはコワーキングスペースを運営する会社ではなく、グローバルネットワークを提供する会社だと思っています。ですので、ほかに競合する会社もないと思っています。コミュニティデザインにおいても、美しいデザインと同時にそこでのふるまいを最大限に発揮できる機能性も重視しています。いうなれば、そこにいることでアイデアが生まれるデザインにこだわっているのです。たとえば、人の動きが感じられる、ガラスパーティションを使うこともその重要な特徴のひとつです。仕事をする上で重要なパーソナルな感覚も整えながら、そこにいる人たちの気配を感じさせることで、相互に対話が生まれたり、協働するきっかけをつくること。「ネットワーク」を形成することこそWeWorkが大切にしていることでもあります。

エビー・ワイズカーバーさんインタビュー

ローカルチームという概念

ー 地元のデザイナー、建築家など、ローカルスタッフと空間作りなどの協働をされているとお聞きしましたが、日本でもそのような試みはあるのでしょうか?

はい。もちろんインテリアデザイナー、コミュニティチーム、セールスチームなど日本のWeWorkにおいて日本の仲間の力は欠かせません。グローバルネットカンパニーではありますが、ローカルチームによって運営されているということが大事で、もちろん日本語だけでのコミュニケーションも問題ありません。私も日本に来ていますが、いずれ仕組みが整えばどの国でもローカルスタッフに運営をまかせています。

ー WeWorkでは入居者同士がつながってプロジェクトが発生していると聞いていますが、実際にどんな具体例があるか教えてください。

75%の会員は交流するだけなのですが、残りの25%の会員は実際にそこで知り合った人同士でお金が発生するビジネスを展開しています。最近の具体的な事例としては、香港のWeWorkでHSBC(香港 上海銀行)がワンフロアを借り切り、デザイナー、エンジニアやプログラマーなどをWeWorkのメンバーから雇い、支払いのアプリ立ち上げを行ったということがあげられます。よく聞く事例としてはWeWorkのメンバーが弁護士の仕事をはじめたと聞くと、ほかのメンバーがその人に仕事を依頼するという事例です。

エビー・ワイズカーバーさんインタビュー

ー さまざまなメリットがありそうですね。

はい、そうです。これはWeWorkに常駐するコミュニティスタッフの役割の話ですが、あるワインの会社がテイスティングイベントをやりたいと思ったら、コミュニティスタッフがその立ち上げを手伝います。私たちのコミュニティチームは日々の運営についてもですが、プレゼンのサポート、テナントのためのさまざまなサポートをするという仕事も日課です。

ー 東京は2020年に東京オリンピックを控え、東京のWeWorkでも世界中の人々が一緒に仕事をするシーンが浮かびます。今このタイミングで日本に進出する理由を教えてください。

それはタイミングもでしたが、偶然の要素が大きかったです。とにかく世界中どの都市でWeWorkを展開するにしても、自分たちがやりたいことをベストなかたちで実現させてくれるパートナーとの出会いが大切です。今回の東京に関してもソフトバンクという素晴らしいパートナーと出会えたことが大きいですね。

ー 日本の人たちは「偶然は必然」とよくいいますがまさにそうだったのですね。

確かにそう思います。

ー 日本のクリエイター(デザイナー)についてどのようなイメージをお持ちですか?よくシャイといわれることがありますが。

すでに何名かの日本のクリエイターと仕事をしていますが、私が出会った日本のクリエイターからはそのような印象は持ちませんでしたし、優れた才能をもった方々ばかりでした。

インタヴュー前編では、エビーさんご自身の経歴について、WeWorkの日本進出の経緯などお話をうかがいました。次週公開の後編もご期待ください。