雪の白という幻影。
2023.1.24

雪の景色になぜ、僕は魅了されてしまうのだろうか?

冬のあいだ北の国に降りしきる雪は、木々も、かろうじて残った下草も、冬の寒さに耐えるように倒木の上にある苔も、土も、全ての存在を白く変えてしまう(都会では、ビルも街路樹もコンビニの看板も、アスファルトも白く覆ってしまうという)。

実はその白は、白でありながら、単なる白ではない。
文字通りまっさらな白もあれば、青みがった白、グレーがかった白もある。さらさらと吹く風に舞う白や、雪の結晶の粒状感をともなった白もある。一様にはそれを容易く言語化することはできない。
加治枝里子の雪景色の白は、そんな白色の美しさ、清らかさとともに、白が持つ不穏さ、さえも映し出している。ように思う。
(そして、僕はこの文章を暖房の効いた部屋で、温かい紅茶を飲みながら書いている)

雪の白は、光を受けて反射して、今ここにしかない瞬間を映し出す。それは加治枝里子の写真も同様だ。光を受けて、反応し、写真機でその一瞬をつかみ取り、その黒い箱の中に定着させる。そして、闇の中から慎重に光を手繰り寄せ、ふたたび何かわからないものの上に定着させて、僕らの前に、静かに差しだす。

そんな光が写し出すイメージと、多様さを持った雪が、白が、僕はたまらなく好きだ。

鎌倉のギャラリーJohnにて、1月28日(土)~2月5日(日)の間、テラススクエアでも個展を開催した、写真家・加治枝里子による写真展「BEYOND THE GREY 灰色のかなた」が開催される。

以下、プレスリリースより。

1月28日(土)~2月5日(日)まで鎌倉のギャラリーJohnにて、写真家・加治枝里子による写真展「BEYOND THE GREY 灰色のかなた」を開催いたします。

吹雪の彼方へと消えていく人、雪に埋もれた車、グレーの空と白い月…。
真っ白な雪が私を真っ白にしていく-。
見慣れた土地は一夜にして世界が変わる。
雪に覆われた東北の森や湖、田舎町に迷い込んだ作者が撮り続けてきた景色。
(加治枝里子)

Johnでは1月28日より鎌倉在住の写真家・加治枝里子による写真展を開催いたします。
これまで世界中を旅し、作品制作を続けてきた加治枝里子。Johnでは2年半ぶり2度目の個展となります。
10年ほど前から雪山に通い撮り続けてきた風景。本展では、東北をはじめ国内で撮影されたものを中心に、最新作もあわせて発表いたします。

また本展会期中、John隣接の家具と生活雑貨のお店 STOVE @stove_kamakura でも加治枝里子の写真展を同時開催。
STOVEではTRANSIT58号フィンランド特集の取材で昨年訪れたフィンランドをはじめ、北欧、西欧諸国で撮影された作品が並びます。

加治枝里子(かじ えりこ)
1981年生まれ、写真家。アメリカの美術大学で写真制作をはじめ、2006年にフランス・パリを拠点に写真家として独立。2010年より活動の場を東京に移し、現在は鎌倉を拠点に「TRANSIT」をはじめとした旅雑誌などで活動をすると共に作品制作を続けている。展示に北欧の白夜をテーマにした「夜がこない」(IDEE Gallery )、アイスランドを舞台にした「となりの惑星 ICE CREAM ON ICE PLANET」(Daikanyama T-site) 、「ストライプの光線」(テラススクエア)など。
先月発売されたTRANSIT最新号「フィンランド」特集ではサウナで出会った人々のストーリーを寄稿している。年長+1歳双子の3児の母

テキスト=加藤孝司 Takashi Kato

  • 加治枝里子 写真展「BEYOND THE GREY 灰色のかなた」
  • 会場:John  神奈川県鎌倉市材木座1-6-22
  • 開催日時: 2023年1月28日(土)~2月5日(日) / 11:00-19:00
  • 休館日: 水曜日
  • TEL:080-5389-5005
  • https://www.instagram.com/john_kamakura/
  • 入場無料
  • 会期中、John隣接の家具店「STOVE」でも加治枝里子の写真展が同時開催する。
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