おみゆさんの純喫茶案内(前編)
2017.6.09

どのまちを訪れても、その場所ならではの人とまちの温かさに触れる場所がある。昔ながらの喫茶店もそんな場所のひとつだろう。 そんな喫茶店を愛してやまない一人の女性がいる。喫茶愛に溢れるモデルとして大人気の小谷実由さんこと「おみゆ」さんだ。 そんなおみゆさんが、喫茶店にまつわるアイテムを考えたと小耳にはさみ、たくさんの老舗喫茶店が今も元気に商いをしているまちとしても知られる、神田錦町にお招きし、その喫茶愛についてたっぷりと語っていただいた。

昭和の雰囲気に憧れて

ー 純喫茶イベントをされると聞きましたが、それはどのようなものですか?

表参道にあるミツカルストアで6月9日から6月30日まで「純喫茶準備室」というポップアップショップを展開します。先月末からは、ファッションブランド「I AM I(アイアムアイ)」と一緒に作った、喫茶店に着ていくことなどをイメージした洋服が全国のショップで発売中です。

ー なんか楽しそうな企画ですね。

最初はその企画として純喫茶準備室を用意していたのですが、ミツカルストアでのポップアップイベントでは、それに加え、私物の本やセレクトした雑貨などを販売します。それと企画自体が喫茶店に 行く準備をして欲しいというものなので、まだ喫茶店に行ったことがない人や、一人ではちょっと行きづらいと思っている人に、喫茶店に行くきっかけになるお店になればと思っています。

ー 僕は東京の下町の出身なのですが、今も近所には古い喫茶店がたくさんありますよ。

どちらですか?

ー 浅草です。

えっ!私は葛飾出身です。

ー そうなんですね!下町つながりですね。

平井駅近くには、「ワンモア」というフレンチトーストの美味しい喫茶店もありますよ。ぜひ行ってみてください。

おみゆさんの純喫茶案内

ー 今度行ってみますね。おみゆさんが純喫茶を意識したのはいつのことでしょうか?

5年くらい前に初めて喫茶店に行って、それから好きになりました。もともとファッションや映画なども昔のものが好きで、音楽も1960年代のグループサウンズが大好きでした。女優の加賀まりこさんの 昔の映画もとにかく可愛くて、熱中してみていました。特に洋服は古いものが好きで、昔の映画をみていても、お洋服や女優さんのメイク、映画の中に出てくる部屋の内装などに目がいってしまいます。 そういった意味では10代の頃から、そのような世界を追い求めていました。だけどいくら昔の映画をみても、どこか古い図鑑をみているようで、いまいちしっくりこなかったんです。

ー それで実際に純喫茶に行ってこれだ!と?

そうなんです。初めて行ったきっかけは仲の良い友だちが喫茶店でバイトをしたいから一緒に偵察に来てと言われたことでした。その時は今とは違ってコーヒーも飲めなかったので、私が行ってもいい ところなのかなと思っていました。でもお店のドアを開けたとたん、もうトリコになってしまって。内装も映画でみていた純喫茶のイメージそのままだし、本当に時が止まっているのかと思い、感動しま した。そこに行ったことで、それまで傍観していただけの自分が、その一部になれたような気がしたんです。それからはもう、いろいろな喫茶店に行くようになりました。でもその頃はまだ喫茶店に行 くというよりも、ディズニーランドに行く感覚に近かったかもしれませんね。

ー テーマパークに行くような、新しい世界が広がっていたのですね。

そう!実際に足を運び体感して、その一部になれたことが嬉しくて。だから究極的にはコーヒーの味や店員さんの愛想のことはあまり気にならないです(笑)。 喫茶店に行く理由は、あのソファに座りたい、あの壁紙の柄が好き、あの壁やテーブルをこの目でみてみたいとか、そんな気持ちが大きいです。 純喫茶準備室を思いついたきっかけも、そんなに好きな空間と一体化するためにどんな服を着ていけばいいんだろうと思って、ピッタリのものがないなら自分たちで作ろう!と考えたことがきっかけでした。 そこから喫茶店に着ていきたくなる服をテーマにものづくりをしていきました。

おみゆさんの純喫茶案内

昔ながらの喫茶店の
心地よいおもてなし

ー 喫茶店と洋服って、なんかワクワクする組み合わせですね。

ありがとうございます。よくあの喫茶店のおすすめのメニューはなんですかと聞かれるのですが、それに関して私はどこも一緒だといつも答えます。 逆にどこも一緒なこと、いつでもあることが喫茶店の醍醐味であり安心感だと思っています。あとは喫茶店は家の外にある自分の部屋のような感覚もあります。 それが私にとって、カフェと喫茶店の大きな違いだと思っています。これは本当に個人的な意見なのですが、カフェに行くと緊張してしまうんです。

ー 確かに、カフェと喫茶店の居心地ってすこし違う気もします。

お客さんに気をつかわせないような、そのもてなし方が心地いいんです。あとはおばあちゃんの家に行くようなホッとする安心感があります。 いい意味で放っておいてくれるから、何時間でも時間を気にせずに長居することが出来るんです。ぼーっと考え事をしたり、喫茶店は私にとっては何をするにしても最適な場所なんです。

ー まったく同感です。意識して初めて行ったお店はどこでしたか?

新宿にある但馬屋珈琲店の西口にある本店です。さっきの友達がその後働くようになった自家焙煎珈琲のお店で、そこで珈琲が飲めるようになりました。今でもお店の落ち着いた雰囲気が好きでたまに行くこともあります。

ー そのお店から始めて、いろんな喫茶店に行くようになったのですね。

はい。但馬屋珈琲店は私のなかでは落ち着いた系のお店で。上野にあるギャランという喫茶店は知っていますか? 電飾とか内装がめちゃくちゃ派手で、店内にかかっている音楽も懐メロ、お店の方の制服も赤いギンガムチェックだったりして、昔あったキャバレーのような雰囲気がして好きな喫茶店です。

おみゆさんの純喫茶案内

ー なんか興味がそそられるお店ですね。近いので今度行ってみます。おみゆさんは純喫茶のどんなところに惹かれるんですか?

とにかくお店のこだわりを強く感じるところです。純喫茶には、一朝一夕には作り出せない歴史というか、今のカフェにあるような、ものすごくシンプルで、誰にでも適応できるように作られている感じとは真逆の世界観があると思っています。 味のあるソファや椅子に座りながら、このお店を作った人はこの柄とこの柄の組み合わせが好きなんだなあとか想像したり。なんでこう思ったんだろう、というところにものすごく興味がわきます。

ー 一番印象に残っているのはどんなお店ですか?

う〜ん、むずかしいなあ。でも、先程の上野のギャランは店内の一角だけ、黒いタイル張りでシャンデリアが天井から吊り下がっていて、本当にそこだけなんかホストクラブみたいで不思議だなあといくたびに思っています。

ー 喫茶店に行く時はお友達と一緒ですか?

友達とも行きますし、一人でふらっと行って、考え事をすることもあります。

喫茶店に着ていくことをテーマにしたワンピースを着て、神田錦町界隈を歩いてくれた小谷さん。次回の後編では、純喫茶への思いをさらに熱く語っていただきます。

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