サブライム的なるものは、日常、常に意識されてあるものではなく、元来抑圧されたものとして意識下に追いやられている。
それらは繰り返し意識上に持ち出されては、苦悩の種を撒く芽にもなるが、それは痛んだ虫歯を度々舌の先で触っては、快感にも似た痛みを繰り返してしまう行為に似て、決して苦痛と苦悩のみを人に与えるというものではないから如何にも厄介である。
そもそもサブライムの概念は、18世紀頃、盛んに美というものと対比されて論じられてきたという経緯がある。
美が女性的なものと結び付けられて論じられる事が多いの対して、サブライムは男性的なもの、巨大なもの、自然というものと結び付けられて論じられてきた。
ロマン派の詩人や画家が自然と対比させて人間を描く事に終始したのにはそのような思想的な背景がある。
現代に於いてもサブライムは重要な美の概念として機能し得るだけの力と影響力を秘めて偏在している。
自然の摂理が引き起こすものや、自然の摂理の中に取り込まれる事柄は、日常のシステムの中に取り込まれることによって、あたかも日々の生活とは無縁のものとして切り離されてあるが、私たちはそれをただ無縁のものとして意識下に追いやっているに過ぎず、決してそれらが消えてなくなってしまったのではない事に自覚的になる必要がある。
それらはまた、人間が主観=思考に於いて考え出した事柄に過ぎないとしても、あくまでそれを自らの外に客観的事実として扱うところに根本的な事実のすり替えがある。
そうやって我々は日常を事も無げに遣り過ごす術を身につけてしまったとしても、いつの日か崇高なるものの庇護のもとにある自分の存在に気づく時が来るのだ。
写真=石田真澄 Masumi Ishida
テキスト=加藤孝司 Takashi Kato
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