テラススクエアフォトエキシビション
今年初頭から準備を進めてきたテラススクエアフォトエキシビション Vol.16「漂流する朝 長田果純」がいよいよスタートしました。
以下、本展に寄せた執筆者によるテキストになります。
写真は全てが撮られた時点で過去になるから、写真になったものは全てが過ぎ去った時間である。
いま、ここが、さっき、あのとき、と過去形になる。
その意味ですべての写真はなんらかの予兆や予感を孕んでいる。
その自明さが写真のひとつの真理であるように思う。
長田果純さんの作品には、写真がまさにそうであるように静止した「時間」が刻まれている。だかそこには砂浜のうえに砂紋を描きだす風が、その実体は眼には見えないものであったとしても、まざまざと時を刻んでいることに似ている。
と同時に長田さんの作品は、生き生きとした現在をも如実に写し出している。たとえば、いまさっきまでそこに誰かがいたことを不在として刻むぬくもりを持った毛布の肌理やカーテンの襞(ひだ)、壁紙に映る影やからっぽになった部屋、裏庭の樹々にもあらわれている。
「実感」やかけがえのない時間を多く持っているほど、その分だけ人は、かなしみとよろこびを人より多くかかえて生きている。
これらの写真は、人が生きるそのありようそのことを祝福する写真だと思う。
だから人は彼女の写真をみると、自分自身のことを思いやると同時に、ここにはいない他者のことを思い出し、いつくしむことができる。そんな力を彼女の作品から思うのだ。
以下、作家によるテキストになります。
漂流物が、ぽつんとそこにある。
“砂漠の真ん中に置いてある麦わら帽子がゆっくりと揺れている”
子供の頃から繰り返し見る夢、その映像が静かに重なった。
様々な場所にこぼれ落ちた点を、記憶の引き出しから探しては重ね、
胸を締めつけたり、過去を懐かしんでいる。
わたしたちは時間の中を漂流し、今ここにいる。
長田果純 KUSUMI OSADA
1991年静岡県生まれ。東京在住の写真家。14歳の頃から写真を撮り始め、現在はポートレート撮影やファッション、アーティスト写真や映画スチールなど、活動は多岐にわたる。個展に、「透明になることは二度とない」2014年(下北沢アートスペース / 東京)、「いまは夜のつづき」2016年(三鷹ユメノギャラリー / 東京)、「平凡な夢」2019年(Alt_Medium/東京) がある。 osadakasumi.com
執筆(作家ポートレート撮影)=加藤孝司 Takashi Kato
- テラススクエアフォトエキシビション #16
漂流する朝 長田果純 - 住所: 千代田区神田錦町3-22 テラススクエア 1F エントランスロビー
- 開催日時: 開催中〜2020年10月30日(金) / 8:00~20:00
- 休館日: 土曜・日曜・祝日
- 入場無料
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