SAYS FARMへの旅
2017.5.14

富山県氷見市のワイナリーSAYS FARMと神田エリアに拠点を構える7社との共同プロジェクト「URBAN VINEYARD」が始動したが、それに先立ち2017年2月に富山県にあるSAYS FARMに、運営チームとアンサブル編集部は視察に訪れる機会をもった。

新幹線で東京駅から2時間あまり。富山駅に降り立つと、前日からの雪が降り積もり、あたりはうっすらと一面の銀世界。最寄り駅からタクシーを飛ばし、ゆっくりと山をのぼっていくと、納屋と葡萄畑が広がる牧歌的な風景がみえてくる。

ここが小高い丘から氷見の海を見下ろすことができる、高台に位置したSAYSFARMだ。季節は冬ということもあり、葡萄の実がなっているのはみることは出来なかったが、味わい深いSAYS FARMのワインがつくられる豊かな土地はしっかりと堪能することはできた。天気がいいと湾越しに立山連峰もみえるという。

SAYS FARMは2008年に創業した若いワイナリー。だが、ワインのことが詳しくない僕でもその名を数年前から聞き知っているほど、ワイン好きの間では人気の高いワインをつくるワイナリーである。

その歴史は氷見の魚問屋「つりや」の今はなき前オーナーの「ワイナリーをやろう」という強い思いで実現したという。ワインづくりは20年あまり耕作放棄地であったという土地との出会いから具現化。その土地を開拓し畑をつくり葡萄の苗を植え、創業から3年間かけて樹を育てることに着手。最初の1〜2年は木を育て、三年目から実を収穫。2011年に自社で醸造できるようになり、その年SAY FARM初の北陸の大地の恵みの結晶ともいえるワインが生まれた。

SAYS FARMは100%自社原料のみの葡萄で、自社醸造にこだわったワインを生産するワイナリーだが、現在では約9000本の葡萄の樹を、除草剤無使用、最低限の農薬のみのなるべく自然に近い状況で人の暮らしと共生しながら栽培している。この土地らしさをもったここでしかつくることのできないワイン造りをモットーに、北陸産の美味しく美しいワインを生産している。

醸造所となる工場の地下にはフランス製の木製の樽が眠っている。そしてその周囲を取り囲むコンテナを積み重ねた棚にはボトル詰めされたワインたちが出荷の時を待っている。

SAYS FARMには宿泊ができるSTAY棟と、CAFE&SHOP、GALLERYを併設したレストラン棟を完備。この見晴らしのよい丘の上で、極上のワインと料理、そしてここ神田錦町界隈に東京事務所を構える、富山の設計事務所「五割一分」が手がけた空間でゆったりとした時間を過ごすことができる。

2017年春に始まった「URBAN VINEYARD」は、神田錦町にある複合ビル「テラススクエア」の農園で30本の葡萄「ピノノワール」を栽培し、ワイン造りを行うプロジェクト。

3月に植樹された葡萄の苗は、5月現在すくすくと順調に成長している。テラススクエアで栽培され収穫された葡萄は、SAYS FARMの農園に同じタイミングに植え、育てられ収穫された葡萄を混醸し、オリンピックイヤーである2002年にSAYS FARMの醸造所でワイン一樽分を製造し、このエリアの飲食店を中心にふるまわれる計画だ。

都会の耕作放棄地でワイン葡萄の樹を栽培することで、このまちづくりや、まちを思うことの象徴となり、皆で見守り育てていく。

ここで働く人たちが自分ごとのひとつとして、手をかけ目をかけた分だけ、収穫のときの喜びも大きいだろう。SAYS FARMと神田錦町の取り組みは始まったばかりだ。

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