takeo paper show 2018が開幕。
表参道のスパイラルホールでtakeo paper show 2018がいよいよ今日より開幕(6月1日〜6月3日までの3日間)。
4年ぶりの開催となる今回のタイトルは「precision 精度を経て立ち上がる紙」。
竹尾ペーパーショウは今回で48回目。第一回目となる開催は日本が高度経済成長真っ只中の1965年のこと。前年には東京オリンピックも開催され、終戦20年を経て、日本はもはや戦後でないといわれた時代だ。
今回アートディレクターには、近年活躍がめざましい注目のグラフィックデザイナーである田中義久さんを迎えての開催となる。田中さんが掲げたのが、紙を展示するエキシビションではなく、紙をつくるエキシビションというお題で、新しい”ファインペーパー”のあり方を提案すること。
安東陽子、葛西薫、田中義久、DRILL DESIGN、永原康史、原研哉、原田祐馬、藤城成貴、三澤遥という9名のクリエイターと製紙メーカーが協働、紙の原点に立ち返り、紙という概念を再考し未来のファインペーパーをつくった。
素材もかたちも異なる色とりどりの紙、そしてこれも紙、あれも紙と、紙の可能性と未来を感じさせる作品が提示された(会場は写真撮影が可能)。
毎回注目される会場構成を手がけたのは建築家の中山英之さん。漆黒の空間に、ライトボックスに照らされたどこにでもありそうな天板が9つ並ぶ。その一見見なれたテーブルには実は深い仕掛けが。光を吸収する黒い布が貼られた天板は宇宙空間に吸い込まれるような漆黒の闇。そこに2センチ浮かせて紙たちが展示されている。”床面”と作品との関係性が絶妙だ。地面は中山さんの建築にとっても重要な意味をもっていることを思い出した。そんな言われないとわからない仕掛けは一見の価値あり。黒い闇ともいえる、中山さんはそのブラックホールのような空間から、新しい紙が生まれるイメージをつくりだした。
その闇のテーブルの上にはあるのは、竹尾のファインペーパーを用いた反射しない照明。黒いシェード部分の内側に白いファインペーパーをシームレスに這わせ、間接光で光をまわす仕掛けだ。テーブルの作品の上に手をかざしても、そこに影が落ちることはない。会場構成もいわば紙を使ったひとつの作品である。紙が生まれる舞台演出は見事だ。
ウェブメディア全盛の今、紙媒体は衰退の一途をたどっている。紙が置かれた未来は決して明るいわけではない。だが、伝統的に受け継がれてきた紙づくりの技術とそれを支えるつくり手の思い、自由な新たな視点で紙をフォーマットにものをつくるクリエイターのアイデア、そして新たな紙の開発と販売を通じて紙の付加価値、そして文化を伝える竹尾の取り組みが続く限り、紙の未来は明るいともいえるのかもしれない。
ぜひ会場に足を運んでみていただきたい。
写真と文=加藤孝司
- takeo paper show 2018
precision 精度を経て立ち上がる紙 - 場所: スパイラルホール(スパイラル3F)
- 開催日時: 2018年6月1日(金)〜6月3日(日) 6/1~6/2 11:00~20:00 , 6/3 11:00~17:00(入場は終了時間の30分前まで)
- 入場無料。※入場には事前登録が必要です。
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