山の上ホテルの
バーノンノンへ
2018.8.14

バーというものは、ずっと大人が行くところだと憧れていた。年齢だけはもう充分大人になってもなかなかハードルが高い場所で、何を頼めばいいのかわからないなんて、ぼやいていた。
最近になって、ようやくいくつかの好きなバーができたのは、バーを必要とする時間が生まれたからかもしれない。
食事ではなく、お酒を純粋に飲みたいとき。お酒を飲むという時間を楽しみたいとき。
ちょっと疲れたなーというとき。家に帰る前に、頭と心を切り替えたいとき。
友人と楽しく食事をした後、もう少しだけ話したいなというとき。
そういう時間を過ごすために、バーへ立ち寄るようになった。

山の上ホテルはクラシックホテルの代表ともいえる、美しい古さが魅力的な場所だ。大正から昭和初期にかけて、日本各地で数多くの西洋建築物を設計したウィリアム・メレル・ヴォーリズが建てた建物を生かしている。
ただでさえバーは入りにくいのに、そんな由緒正しいホテルにあるバーなんて・・・・・・と敬遠することなかれ。

1階にある英国式バーのバーノンノンは、決して広くないこじんまりとした空間で、とても居心地がいい。こなれた仕草のおじさまも、素敵なマダムも、私のような初心者もいるけれど、それぞれが静かにくつろいでいるのがわかる。接客のプロ中のプロだからこそ、初心者も安心して身を委ねられるものなのかもしれない。
こちらに気恥ずかしさを感じさせることなく、くつろがせてくれる。

「何を頼めばいいかわからない」という悩みは今もそのままで、なぜなら私はカクテルの名前が覚えられない。だから「フルーツを使った飲みやすいもの」「きりっとした感じでシュワシュワしているもの」「少し薬草っぽいリキュールを使ってほしい」などと、そのときの気分によって味の好みで伝えるようにしている。

バーノンノンのような老舗に行ったなら、オリジナルカクテルを頼むのも楽しい。
ウォッカベースにりんごのリキュールなどが入った「ザ・ヒルトップ」や、ウイスキーにざくろのシロップやオレンジジュースが入った美しい赤いカクテル、「ドクター・ヴォーリズ・リバイバル」など。

ちなみに女性は、「ザ・ヒルトップ」と「マティーニ」(ジンベースにベルモットというフレーバーワインを加えたカクテル)を頼む人が多いとか。

写真と文=藤井志織

  • 山の上ホテル バーノンノン
  • 場所:東京都千代田区神田駿河台1-1
  • TEL:03-3293-2311(大代表)
  • 営業時間:17:00〜1:30L.O.(日曜・祝日および連休最終日は16:00〜22:30L.O.)
  • 定休日:無休

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