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ナインアワーズ浅草がオープン。

観光客で賑わう浅草の繁華街の中に突如出現した建築。
アーケード商店街の前、昔ながらの居酒屋と、場外馬券売り場の向かいの角地に建つ建築は、都市的な機能をもった現代的なカプセルホテルとして話題の「ナインアワーズ」の新店舗「ナインアワーズ浅草」(東京都台東区浅草2-6-15)だ。

ナインアワーズとは9時間を意味する。これはホテルにチェックインしてからチェックアウトをするまでの時間を表し、都市における一日の締めくくりを「眠り」を通じてリセット、リフレッシュするための時間である。
チェックインしてから「汗を洗い流す」ことに1時間、「眠る」ことに7時間、そして朝目覚めてからチェックアウトするまでの「身支度」に1時間の計9時間=9h nine hours。

建築の設計は、今年3月に開業した赤坂、5月開業の竹橋と続き、建築家の平田晃久さんが手がける。
周辺は浅草の観光地の中でも奥まった場所。日本最古の遊園地といわれる「花やしき」や、大衆酒場街、かつては見世物小屋やがらくた市が軒を連ねた猥雑な場所。
地域性を読み取りながら設計された建物は、浅草六区の賑わいや路地を垂直に積層したような建築だ。
外観における最大の特徴は、なんといっても建物外壁に巻き付くように取り付けられた外階段。この階段は各フロアを外から行き来するための階段であり、街なかにあってはいわば路地のような存在。高層階部分の階段を上り下りしていると目もくらむような感覚になる。浅草寺、遊園地の遊具、浅草ビューホテル、足下には商店街のアーケードの屋根、遠くに東京スカイツリーも見える。

クリエイティブディレクション、宿泊施設内部のプロダクトデザイン&カプセルのデザインは工業デザイナーの柴田文江さん、サイン&グラフィックデザインはデザイナーの廣村正彰さん。もはやナインアワーズにあって安定の布陣だ。

少し建築家の平田晃久さんと話す機会があった。
設計には周辺の環境を意識しながら、カプセルのかたまりを積み重ねた岩山のように設計し、セットバックした各フロアの余白に外階段を巻き付けたという。
僕はこの建物を見て思い出したのは、この時平田さんにも話したのだが、明治に建設され大正にかけてこの近くに建っていた「凌雲閣」、いわゆる浅草12階だ。現在ナインアワーズと場外馬券売り場が建っているあたりは、そのむかし通称ひょうたん池といわれた人工の池があった。その周辺には浅草寺の敷地があり、反対側には当時の東京一の繁華街があった。
凌雲閣はその池のほとりに立っていた日本初のエレベーターを搭載した高層建築である。開業早々エレベーターは故障し、人々はこの展望台の内部の螺旋階段をぐるぐる登って、高所から浅草を臨み楽しんだという。
内覧会当日も近くを歩く浅草人も興味深げに建物を見上げていた。新しいもの好きの浅草人にもこのユニークなランドマークにすぐに馴染むだろう(ちなみに僕も浅草生まれである)。

神田錦町もある東京の東側エリアにまたみるべき場所が出来たことは、街歩きをする上でもとても楽しい。
ナインアワーズでは宿泊だけではなく、シャワーの利用もできる。そしてなんといっても「ナインアワーズ浅草」の1階にはノルウェーオスロの人気カフェ「FUGLEN」の日本2号店「FUGLEN ASAKUSA」も入っている。
浅草からは東京メトロ銀座線で約10分、神田エリアの街歩きと合わせて、ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。

写真と文=加藤孝司

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