四季のなかで、秋はいちばん短く感じる。
今年の夏は厳しかった。ずっと暑いね、しんどいね、と言っていたら、いきなり寒くなった。こないだまでタンクトップ1枚で汗ばんでいたのに、今やニットが恋しい。
毎年、夏休み明けから年末までは忙しくて、意識していないと秋はあっという間に過ぎてしまう。
和菓子屋さんは、季節を敏感に感じることができる場所のひとつ。
神田が誇る老舗の和菓子屋「ささま」の店先に”新栗むし羊羹”の字を見たら、立ち寄らずにはいられない。
生菓子を買うと、簡素できりっとした白い正方形の箱に入れてくれる。
定番の最中も忘れずに。これは通年あるけれど、何回食べてもおいしい。パリッとした薄い皮のなかに、すっきりとした甘さのあんこが入っている。小ぶりなサイズに、江戸の粋を感じる。
秋といえば、きのこ! こちらは神田の「yaoyu」でいただいた、ジロール茸と半熟卵のひと皿。
野菜も魚介も、旬の味覚を洗練された味わいでサーブしてくれる素晴らしいレストラン。自然派ワインが進む。
神田から中央線で一本の中野駅からほど近い「松㐂」も、おすすめのビストロ。コースも最高だけど、アラカルトとワインでバー使いもできる。
ある秋の日のデザートで見つけたのは、アップルクランブル。りんごもおいしい季節。
そして10月頃になると、八百屋さんで目にするようになる新生姜。甘酢漬けもいいけれど、ほかにも使い道はたくさん。
例えばレモンと蜂蜜(または砂糖)で漬けると、ほんのりピンクのレモネードができる。
千切りにして豚肉とごはんに炊き込むのもおいしい。
今の一押しはこちら。新生姜のフリット!
出張料理人の岸本恵理子さんが作ってくれたもので、塩を振るだけでもおいしいけれど、まだ青いみかんとバイマックルー(タイのハーブ)を刻んでほんの少し塩を足したソースを添えると、もう止まらない味。
八百屋さんでは、イチジクにも心惹かれる。完熟のイチジクは終わりかけだけど、寒くなってくると完熟できずに収穫された未熟な固いイチジクも売られるようになる。
これはコンポートや甘露煮、ジャムにするといい。バニラビーンズと合わせてジャムにしたものは、厚切りのバターと一緒にバゲットにのせるだけで、最高のおやつになる。
天婦羅にするのもおいしいと聞くけれど、まだ試したことはない。
今日は福田里香さんの著書「いちじく好きのためのレシピ」を参考に、はちみつとレモン果汁で蒸してみた。
スーパーマーケットの軒先で販売されている焼き芋も、秋になると食べたくなるもの。
わが家では、牛乳と合わせてミキサーで撹拌し、ちょっと塩を加えたポタージュにするのが気に入っている。シナモンを振ったり、デザート風にしたいときはバニラを加えたり。
食欲の秋ばかりフォーカスしたけれど、神保町はご存知、古本の町。好きな本を片手に純喫茶であたたかいコーヒーという読書の秋もいいですね。
写真と文=藤井志織
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