太宰府天満宮でピエール・ユイグを視る。
歴史に位置づけられるアート。
2017.12.11

先日の週末は福岡の太宰府天満宮で開催中の世界的な現代美術家である、ピエール・ユイグの「ソトタマシイ」の内覧会にお邪魔してきました。

ピエール・ユイグは1962年フランス生まれの現代美術家。1990 年代からヴィデオ作品やインスタレーション作品などを発表し、2001年第49回ヴェニス・ビエンナーレの審査員賞、2002年ヒューゴ・ボス賞受賞した。2013年からは個展「Pierre Huyghe」をパリポンピドゥセンター他で開催。今年、元アイススケート場の床を掘り起こすかたちで制作された「After ALife Ahead」は、現代のあらゆる場所がSF的で、「遺跡」のような場所になりうることを示していた。

神田錦町にも近い現代美術ギャラリー「TARONASU」さんともゆかりの深い作家さん、ということで今回取材レポートをお送りします。

太宰府天満宮はご存知の通り、菅原道真公を祭神として祀る学問の神様として、日本中から多くの参拝者が訪れることで知られている。参道には太宰府名物の梅ヶ枝餅を売る土産物屋が軒を連ね、私たちの地元である神田明神や浅草寺を思わせる賑わい。

その太宰府天満宮は2006年より「開放性」と「固有性」をキーワードに、太宰府への取材と滞在を経て作品を制作するアートプログラムを展開していて、今回第10回目となる展示と展示作品を手がているのがピエール・ユイグというわけです。

本展は千百年以上という太宰府天満宮の歴史の中のひとつと位置付けることも可能な、時を重ねていくアート作品。本殿の裏手にある丘にある階段上りきった中腹にある土地を掘り起こしたような作品には、土、石、池、梅の木、橙の木、ミツバチ、猫など、自然や太宰府天満宮ともゆかりのあるものたちで構成された空間が、歴史ロマンたっぷりに展開されていた。2012年のドクメンタ13で取り組んだ「Untilled 未耕作地」プロジェクトにも共通する「自然」と「人為」の関係性という、ユイグの考察を垣間見ることができる。
作品の中に入り込んだような体験、池に浮かぶモネの池にあるものから移殖したという蓮、日の丸の配色の錦鯉、ウーパールーパー、太宰府天満宮境内にある飛梅からとり木した飛梅、縁起のよい橙の木など「自然」を用いながら、庭という「人為」的なプラットホームをつくり上げた圧倒的な作品。

美術館の展示空間とは異なり、土地と森を舞台に展開される作品ということで、公開は週末の天候状態のよい日のみ、時間も11時から15時と限定されるので、訪れる際には特設Facebookページ、または太宰府天満宮文化研究所にお電話で直接お問い合わせください。

太宰府天満宮宝物殿での屋内展示に展示されている本作のためのピエール・ユイグのドローイング作品。

昭和初期の写真。右の山の上に常設展示されている。東京でもスケールの大きいこのような作品がみたいと福岡の方を羨ましく思いました。

写真と文=加藤孝司

  • 太宰府天満宮アートプログラムvol.10 ピエール・ユイグ「ソトタマシイ」
  • 2017年11月26日より公開中。
  • 土曜日曜の11時から15時まで公開予定。雨雪時中止 
  • 詳しくは特設Facebookページにて、あるいは太宰府天満宮文化研究所(092-922-8551 9:00〜17:00)までお電話でお問い合わせください。
  • 福岡県太宰府市4-7-1
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